金融、航空、商社・・・多様な業界に生かせる言葉以上の伝える力

相手の考え方を理解して初めて言葉が生きる

小林いずみ経済同友会副代表幹事

 メリルリンチ日本証券社長や国際機関トップなどを経て、現在は複数社の社外取締役を務める小林いずみ経済同友会副代表幹事。グローバルなビジネスの場で、多様な人と働くための考える力や伝える力を聞いた。  ―航空や商社、金融などの異なる分野をどう理解し、経営に参加していますか。  「航空機の技術的な話はわからなくても、いろいろな角度から質問することで、計画が甘くないか、『におい』で感じられる。重要なのは、きれいにストーリーを描けているか。私自身も経営者の時にストーリーを描くことを心がけた。いろいろな質問への答えのつじつまが合わない時は、詰めが甘い」  ―ストーリーを描く力を鍛えるには。  「周囲に説明しながら、とことん腹落ちするまで考える。私は外資系企業にいたため、英語で説明しなければならなかった。流ちょうに話せない分、カギとなるメッセージをとことん絞り込み、的確に伝えるようにしてきた。話の肝を研ぎ澄ます訓練になった」  ―さまざまな国の人と仕事をする上で、言葉の選び方などをどう工夫していましたか。  「コミュニケーションは言語を使うが、言葉だけでは十分ではない。文化や論理構築、モノの考え方の違いを理解し、それに合わせて、相手に理解してもらえるように伝えることが重要だ」  ―そう考えるきっかけはありましたか。  「メリルリンチ時代に、西暦の2ケタ表示が原因でコンピューターシステムに問題が生じる『2000年問題』に対応していた時だった。日本人は、関係する全てのシステムのリストを上げて、分類するという順序で、下から積み上げて考える。欧米人は上から考える。私は、両方から『(欧米人は/日本人は)やるべきことをわかってない』と言われた」  ―正しい言葉でも通じないのですね。  「自分を理解してもらうため、相手の考え方を理解する。それで初めて言語が生きる。また、異言語間では、ぴったり同じ意味を持つ表現がないことがあり、言葉だけで表せないこともある。その違いを超えるのは、相手を理解しようとしているか、相手を好きか、といったこと。これは言葉を超えて伝わる。話す方は伝えたくても、聞いている方が同じ気持ちとは限らない。相手を理解しようとしていることも伝えるといい」  ―これぞ『良い伝え方』はありますか。  「経営者は判断を間違えないようにアップサイドとダウンサイドの両方の情報がほしいが、情報が増え過ぎると内容がぼやける。小さなことでも意思決定の経験を増やすと、適切な情報を選ぶ力が付く。私は日々の行動にゲーム感覚で取り入れている。例えば、雪の日に乗る電車は各駅停車と急行のどちらがいいかといった具合だ。また、印象的な言葉を使う前に、本当に言いたいことを整理して自分の言葉で話すことが重要だ」  ―伝え方に悩む人にアドバイスはありますか。  「まず自分の信念を持つこと。格好つけようとしても、自分が信じていないことは伝わらない。これまで日本の教育はモノを考える機会が少なく、みんな一緒が良いとされてきた。頑固な子どもを育てることは大変だが、頑固な子どもは自分の考えを持っている。核となる考えを持っていれば、言葉だけでなく、絵文字なども使って伝えることができる」

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