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揺れる東芝「事後対応」ケーススタディ・オリンパス

東芝、21日に社長が記者会見。第三者委員会から報告書を公開し、進退についても言及
 東芝は、不適切会計問題を調査している第三者委員会(委員長・上田広一元東京高検検事長)から20日に報告書を受け取り、概要を同日夜に公表。21日午後に報告書の全文を公開したうえで、田中久雄社長が記者会見を行う。2014年3月期までの5年間の利益修正額は1500億円を超え、その他にもいくつかの事業で減損処理の発生は避けられず、財務状況は大幅に悪化する。

 21日の会見では田中久雄社長、佐々木則夫副会長の辞任が表明される見通し。田中社長の後任など新しい経営体制を早期に固めると同時に、社外取締役を大幅に増やすなど再発防止策作りも急ぐ。事後対応を間違うと、会社そのものの存続を揺るがしかねない。ガバナンスの強化は当然だが、本質的な課題として東芝の「稼ぐ力」が弱まっているという問題がある。個々の事業で戦略の立て直しと、構造改革に踏み込まざるを得ない。

 事後対応では2011年に粉飾決算が明らかになり、旧経営陣が逮捕・起訴されたオリンパス。経営体制の刷新に加え、社外取締役を半数以上にするなどガバナンス強化を前面に打ち出し、上場廃止ではなく管理体制の改善を求める「特設注意市場銘柄」にとどまった。東芝も今回、同じく同銘柄に指定される見通し。

 オリンパスはその後、ソニーと資本提携するなど財務基盤を強化。デジタルカメラ事業は構造改革が遅れ赤字が続くも、柱である医療機器事業の営業利益率は22%台と高水準で、株価は粉飾決算発覚時の底値から足元では10倍に回復した。2015年3月期は4期ぶりに復配を果たし、今年度中にはソニーと共同開発中の新しい内視鏡検査システムの第1号製品が投入される予定。来年度からは新しい中期経営計画がスタートし、さらなる成長フェーズへ舵を切る。

 オリンパスの事件直後の対応から、その後の再生について日刊工業新聞で掲載された記事を振り返りながら、ケーススタディとして見ていく。

明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
オリンパスはやはり上場廃止にならならず、常に市場の目にさらされていたことが再生で大きかった。ソニーとの資本提携も発表当時は実効性について批判的な声もあったが信用補完になり、ひとまず軌道にのりつつある。医療機器という事業の幹があったのも、再生の道を分かりやすくした。産業界全体でみると、11年の当時からガバナンスの強化が指摘されていたが、上場企業における新しい企業統治指針「コーポレートガバナンス・コード」が動き出したのがようやく今年6月。それも実行する企業や経営陣の意識次第で、機能するかが大きく変わる。幸い、東芝は医療やインフラの一部、半導体の一部などで幹となる事業を抱えている。変な社内対立は「ノーサイド」にして再スタートを切って欲しい。

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