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電機大手の業績「総じて視界良好」は本当か

5社が営業増益。通期で上振れ余地も
電機大手の業績「総じて視界良好」は本当か

日立は通期見通しを据え置いたが上方修正の可能性も(東原敏昭社長)

 大手電機8社の2018年4―6月期連結決算が8日出そろい、5社が営業増益となった。ソニーや日立製作所が4―6月期としては過去最高だった一方、海外事業に減速が見られた三菱電機は減益、NECは赤字が続く。19年3月期業績予想は、上方修正したソニーを除き7社が据え置いた。貿易摩擦など世界経済に懸念材料はあるが、総じて視界良好で日立製作所などは業績の上振れ余地が小さくない。

 東芝が8日発表した4―6月期連結決算(米国会計基準)は当期利益がメモリー事業の売却で大幅増益になったものの、営業利益は前年同期比94・5%減の7億円。前年同期も大黒柱だったメモリー事業を除いており、新体制での火力・水力、ハードディスクドライブ事業などの苦境が浮き彫りになった。

 会見した平田政善執行役専務は「官公庁向けの売り上げに伴う利益や固定費の縮減効果などが年度後半にあらわれる」と述べた。策定中の経営再建計画を11月に公表する方針も示した。

 増益企業の中で目立ったのがソニー。減益予想だった19年3月期の当期利益見通しを前期比1・9%増の5000億円(従来予想4800億円)に引き上げた。家庭用ゲーム機「プレイステーション4」の本体やソフト販売が好調で、ゲーム事業が全体をけん引する。

 日立製作所は構造改革の成果を確実に取り込んだ。主要7部門のうち、情報・通信、建機を中心に5部門で営業利益100億円を継続的に上回る体制が整う。通期予想は据え置いたが、為替の想定レートを1ドル=105円に置いたことも含め、上振れ材料は多い。

 富士通の営業利益は前年同期比16倍となる795億円だったが、年金制度変更に伴い、利益を計上したため。本業は営業赤字で、半導体などが低迷する。

 海外事業の減速や苦戦が響いたのが三菱電機とNEC。三菱電機は主力のFAシステムなど産業メカトロニクス部門に足踏み感が出ている。海外の有機EL、スマートフォン向けの設備投資が一服した影響が出た。NECは無線通信機器など海外事業が不振。4-6月期はグローバル事業の営業損益が82億円の赤字だった。
                 
日刊工業新聞2018年8月9日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
増益組も海外市場への警戒感を隠さない。現状では各社は米中貿易摩擦による販売活動への影響は見られないと声をそろえるが、中国から米国への製品供給の競争力低下など懸念もくすぶる。日立の西山光秋執行役専務は「(生産や調達を)機動的に進める」としている。

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