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政投銀が英オックスフォード大と人材育成する狙い

渡辺一社長インタビュー
政投銀が英オックスフォード大と人材育成する狙い

日本政策投資銀行・渡辺一社長

 日本政策投資銀行のトップに、2代続けて生え抜きの渡辺一氏が就いた。2008年に株式会社化してから10年。産業金融の中立的な担い手として長期資金・リスクマネーの供給という投融資一体型の金融機能を通じ取引先の課題解決に取り組む。「より先鋭化していく」とする渡辺社長に今後の方針を聞いた。

 ―19年度を最終年度とする中期経営計画を実行する上で、民間金融機関との協調を挙げています。

 「株式会社化による自己調達の増加で地方銀行からの借り入れが増えている。共同ファンドやシンジケートローン(協調融資)など地域金融機関との取引も厚くなっており地域金融機関との連携は自然な流れ。情報交流の活発化で地域の活性化につなげたい。メガバンクなど他金融機関との連携は従来通り続け、これをより深めたい」

 ―人材への投資、職員への教育の充実も挙げています。

 「英オックスフォード大学との間で独自の『グローバル経営人財育成プログラム』を創設した。30歳前後の職員を選抜し、グローバルな観点からリーダーシップ論を学んでもらう。業界の世界市場や日本の立ち位置を学び、コミュニケーション能力などを高めてほしい。中計最終年度に検証し、効果があれば拡充する。シニア向けでは当行が資本提携するM&A(合併・買収)ファームへの職員の出向も検討している」

 ―資金供給分野は、従来のエネルギー、運輸・交通、都市開発だけではなく、航空宇宙など3分野を開拓中で、本年度、物流を追加しました。

 「人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)などの技術革新と深刻化する人手不足の問題があって、これから変化があるとみて物流分野の追加を判断した。秋にも研究会を立ち上げる。その際、異業種間の結節点になりたい。結節点は当行の一番の特徴。異業種が集まる時に意見の言いやすい人がいた方が調整しやすい。宇宙は宇宙航空研究開発機構(JAXA)と17年に連携協定を結んだが、これから本格的に成果に結び付けたい」
(聞き手=山谷逸平)
日刊工業新聞2018年8月8日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
政投銀はエネルギー、運輸・交通、都市開発の既存3分野で、投融資残高の6割以上を占める。一方、新分野として掲げた航空宇宙、通信、ヘルスケア、ロジスティクスへの取り組みはまだ始めたばかり。育成した人材をこうした今後成長が期待できる分野に集中的に投入し、開拓・拡充していく本気度が求められる。(山谷逸平)

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