旭化成の米セージ買収、決断の裏に東レの存在

注力する人工皮革事業の命運が尽きかねない瀬戸際の状況が主要因に

会見する小堀秀毅社長(左)と吉田浩専務執行役員

 旭化成による自動車用シート材大手の米セージ・オートモーティブ・インテリアズ買収決断の裏には東レの存在があった。注力する人工皮革事業の命運が尽きかねない瀬戸際の状況が、7億ドル(約791億円)と同社で過去3番目の大型買収に踏み切る主要因だった。電池材料など何かと競合することの多いライバルが図らずも後押しした格好だ。一方、米社は年間約40億円の利益貢献が当面期待できそうで、良い買い物なのは間違いない。  旭化成がセージ買収に関して親会社の米クリアレイク・セージ・ホールディングスなどと本格的に交渉入りしたのは2017年秋だとしている。ただ、引き金はもっと前に引かれていた。  セージが15年にイタリアの染色加工メーカーのミコ(ゴリツィア)を買収したのが発端だ。セージが北米市場向けに旭化成のスエード調人工皮革「ラムース」を購入して染色加工していたように、欧州でラムースを染色加工しているのがミコなのだ。その関係で旭化成はミコに一部出資している。  欧米の重要顧客が同一グループになったことで、一気にラムースの事業継続リスクが高まった。もし競合他社にセージを買収されたら―。そして、それが同じスエード調人工皮革を手がけて自動車分野で火花を散らす東レだったら―。最悪のシナリオが関係者の頭から離れることはなかったに違いない。ましてカーシート材市場における人工皮革の比率はまだわずかで、顧客を失うことは市場からの撤退につながりかねない。  実際に7月19日の旭化成によるセージ買収の一報を聞いた東レ幹部は、先を越されたと悔しがったという。  ただ、セージ自体は優良企業であり、採算度外視の事業救済策ではない。同社の業績の詳細は明らかにしていないが、営業利益が約80億円でのれん償却後でも約40億円の利益が残るとみられる。  また、自動車部品の2次サプライヤーを取り込むことで、自動車メーカーや1次サプライヤーとの距離は確実に縮まる。CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)など自動車産業の大変革期において高精度な市場・技術動向をつかめる立場は何ものにも代えがたい。その距離感を生かして、旭化成の他素材・電子部品と組み合わせた総合提案も可能になる。 <関連ページ>

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