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工場や物流施設のラック用免震・制震システム、大成建設の狙い目

新築、既存など顧客需要に合った提案で差別化
工場や物流施設のラック用免震・制震システム、大成建設の狙い目

振動台実験による実証試験。(左)TASSラック-制震あり(右)TASSラック-制震なし

 大成建設は自動ラック倉庫の免・制震システムを数多く手がける。東日本大震災では、工場や物流施設の自動ラック倉庫で荷崩れ落下による被害が発生。これを受け、2012年に「TASSラック―制震」を開発、これまで7件に約800台を納入した。16年にはラック部分だけを免震する「同免震」を、17年には解析・評価ツール「同シミュレーター」を開発した。幅広い品ぞろえにより、新築、既設など顧客ニーズに合った提案で差別化を図る。

 「TASSラック―制震」は自動ラック倉庫の最上段の2棚に1台を設置し、ラックの揺れを低減し荷の落下を抑制する。高層ビルに使われていた「マスダンパー」の制震の仕組みを自動倉庫に応用した。

 震度6弱程度に対応し、低コスト。既存建物と新築に導入できる。顧客の自動倉庫の荷姿に応じて、オーダーメードで製作。製品ラインアップは標準タイプ(1方向、2方向)に常温・冷蔵と冷凍があり計4種に上る。

 「同免震」は制震装置では防ぎきれない震度6強の大地震に対して、解析や実験で効果を確認した。新築向けに対応。オイルダンパー、転がり支承、水平バネを最適に組み合わせて、自動ラック頂部の揺れを非免震の状態に比べ3分の1―2分の1に低減できる。

 ラックの部分だけ免震するため、建物全体を免震する一般的な「建屋免震」より経済的だ。エンジニアリング本部産業施設プロジェクト部生産施設・国際プロジェクト室の塚田乙シニアエンジニアは、「免震部分が全体の約10%とすると、総工事費は建屋免震の20―40%に抑えられる」とみる。工場の生産ラインに併設する倉庫などでコストの利点が大きい。

 東日本大震災から7年がたち、企業の地震リスク・対策への関心も温度差が出てきた。そこで「商品単価が高く投資が必要な医薬品業界、商品単価が低くても市場規模が大きい食品業界を中心に継続して提案する」(塚田シニアエンジニア)。

 新築で自動ラック倉庫を計画する際、地震対策は必須事項になりつつある。新築向け「同免震」は医薬品や機械部品製造、食品関連の工場に併設した新規の自動倉庫に提案。入札時に「コストや提案内容を評価してもらい、今年度内に初導入を目指す」(藤井裕之シニアエンジニア)。

 一方、制震装置を導入する際は地震応答解析ツール「同シミュレーター」を使い、最適な装置の仕様や台数、配置を設定。検討中の顧客の初期検討を短期間、安価に実施する体制を築いた。

 また、マテハンメーカーとの協業で販売委託を検討しており、メーカーがもつ自動倉庫の販売網を活用して販売増を目指す。

 
日刊工業新聞2018年7月30日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
さらに施工に手間がかかる要素は工数減、ユニット化などで施工を容易にし、コストダウンを追求。技術の蓄積がある建屋の免・制震システムと連携し、低価格の免・制震システムの開発につなげる。 (文・神谷信隆)

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