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ニコン再参入で激変するミラーレス戦線

ソニーが最大のライバルか
ニコン再参入で激変するミラーレス戦線

ニコン特設サイトより

 ニコンは25日、フルサイズ画像センサーを搭載した新型ミラーレス一眼カメラを発売すると発表した。同カメラ用の新マウントの交換式レンズとあわせて、スペックや価格、発売日などの詳細は8月23日に発表する。同カメラはアダプターを介して一眼レフカメラ用レンズも装着できる。

 同社は以前にミラーレスカメラを販売していたが、当時、開発の比重は一眼レフカメラの方が高かった。しかし、最近ではソニーやオリンパス、富士フイルム、パナソニックなどがミラーレス機でプロカメラマンによる撮影に求められる高画質を実現し、ミラーレス市場は急速に拡大した。一眼レフカメラでニコンと人気を二分するキヤノンも新型ミラーレスカメラを相次いで発売し、シェアを拡大している。特に「EOS Kiss(キス)」シリーズのミラーレスが好調だ。ニコンも構造改革が進んできたこともあり、新たなミラーレスカメラの発売を決めた。

 ニコン幹部は以前から次期ミラーレスカメラについて、ニコンらしさや画質へのこだわりを言及してきた。フルサイズの画像センサーを搭載するニコンのミラーレスカメラにとって、最大のライバルは同サイズのセンサーを搭載するソニーとなる。ただ、フルサイズ同士の競争はマイナスばかりではない。キヤノンもフルサイズのミラーレスカメラに興味を示しており、各社が発売する商品が増えれば市場からのフルサイズミラーレスの認知度が高まる。購入時の選択肢にのぼりやすくなるかもしれない。

 7月25日はニコンの創立記念日。創立100周年の2017年7月25日に開発を発表した一眼レフカメラ「D850」はロングヒットを飛ばした。同じ日に発表した新型ミラーレスも、同じ勢いに乗れるか注目される。

 

インスタブーム追い風、市場回復へ勝負の18年


(2018年3月2日掲載記事でミラーレス市場の現状をおさらい)

 デジタルカメラ産業が正念場を迎えている。ネットへの写真投稿の増加が「インスタ映え」(会員制交流サイトのインスタグラムで映える写真)との流行語まで生むブームとなり、2017年の出荷台数は10年以来の前年比プラス。メーカー各社は人気のミラーレス一眼カメラを相次ぎ投入し、シェア拡大を狙う。ブームを本物の回復につなげられるか。

 ソニーは一眼レフと同じサイズのフルサイズイメージセンサーを搭載した高価格帯製品により、ミラーレス市場をリードする。3月には、ミラーレスカメラ「α7III」を発売した。α9やα7RIIIの良い点を取り入れて、暗所撮影時の画質などを向上した。ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ(東京都港区)の長田康行シニアゼネラルマネジャーは、「既存の『ベーシック』の概念を打ち破る商品だ」と自信を語る。上位機種のα9と高解像度のα7Rシリーズ、高感度のα7Sシリーズに対し、α7はバランスの取れたスタンダードの位置付けで、より幅広い層への販売を狙う。

 キヤノンは、家族向けから本格写真まで対応できるエントリーモデルとして人気の「EOS Kiss(キス)」から初のミラーレスカメラを投入。カメラ事業を担当する戸倉剛執行役員は、「『EOSキスM』は、買い求めやすい価格ながら、言い訳のいらない性能の高さにした。ミラーレスでも首位を目指す上で、起爆剤になる」と意気込みを語った。全ての機能で平均以上の良いバランスを目指した。

 新映像エンジンと約2410万画素のAPS―Cイメージセンサーでどこまで画質を高められるか。スマートフォンとの接続性や、電子ビューファインダー付きで小型・軽量、これを7万円台の価格で実現することにこだわった。海外では「M50」の名前で展開する。「エントリー層より上位の層も取り込みたい。それができるフルスペックだ」(戸倉執行役員)という。

 富士フイルムは、Xシリーズとして最高性能の「X―H1」を投入する。同社は、2―3年内に10万円以上の高級ミラーレスでシェア5割を目標に置く。新製品はハイパフォーマンスの“H”から名前を取り、「撮影領域を広げる画期的な商品」(助野健児社長)として訴求する。高剛性ボディー内に5軸・最大5・5段の手ブレ補正機能を搭載し、スポーツなど動きの激しい被写体や、雪や砂漠などの厳しい環境の撮影にも対応する。

 パナソニックやオリンパスも新機種を投入し、高価格帯に力を注いでいる。

 ニコンは、18年度中にフルサイズのイメージセンサーを搭載した新型ミラーレスカメラを市場投入する考え。2月に開いた決算会見の場で、岡昌志副社長が「来年度中には出せると思っている」とした。得意な一眼レフと同じサイズのセンサーを搭載し、ミラーレスでも画質とニコンらしさにこだわる。キヤノンの戸倉執行役員も、「フルサイズセンサーの高級機も視野に入れている」と語り、全方位の商品戦略を進める。一眼レフ市場を二分するキヤノンとニコンがフルサイズ搭載のミラーレスを投入すれば、さらに高級ミラーレスの選択肢が広がりそうだ。
梶原洵子
梶原洵子 Kajiwara Junko 編集局第二産業部 記者
ようやくニコンの新型ミラーレスカメラが発売されます。以前に販売していたとはいえ、明らかに後発となるニコンですが、これまでの幹部の発言をまとめると、カメラ市場の真ん中を狙う商品になるのでしょうか。

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