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倒産寸前からバスケットボールリーグ1位の集客力へ躍進したクラブ経営

「千葉ジェッツふなばし」島田慎二社長に聞く
 地方創生の時代、地域貢献を夢に抱いて起業したものの業績が伴わず、もがく企業もある。プロバスケットボールクラブ「千葉ジェッツふなばし」も“地域の子どもに夢を与えたい”との情熱を持ちつつも、集客が伸びず運営会社は倒産寸前になった。窮地を救ったのが旅行会社の起業経験を持つ島田慎二社長だ。リーグ1位の集客力へ躍進させた島田社長がクラブ経営で重視したことは、地域の企業にも共通することだった。

 ―2012年にクラブの運営会社の社長に就任し、経営理念「千葉ジェッツを取り巻く全ての人たちと共にハッピーになる」を定めました。
 「“子どもに夢を!”という思いが社員にあっても、現実の世界でブレークダウンできる理念ではなかった。『実現のために何をする』と語れるような、達成を目指せる理念でなければいけない」

 ―経営理念にこだわる理由は。
 「経営理念を実現するために会社は存在する。また木で例えると理念は幹であり、幹がないと木を育てようがない。先代から引き継いだ歴史ある中小企業でも、理念がぼけていたら再定義したら良い。形骸化した時ほど作り直すべきだ」

 ―理念の実現には。
 「究極的には社員の力だ。社員の個人目標を設定し、その目標達成に向けた教育と評価の仕組みを作る。目標は社長と社員が必ず合意する。経営理念と整合し、自身もハッピーになれる目標なら社員も納得する」

 ―地域密着を掲げると営業エリアが限定され、いずれクラブの業績が頭打ちになると思います。その時の目標は。
 「現状維持が目標になるかもしれない。理念と合致するならチケットの値上げが目標になるだろう。また、定性的な目標でも判定可能にすればいい。うちにも『元気にあいさつをする』が目標の社員がいる」

 ―地域課題解決を掲げて起業する企業が成功するには。
 「経営とは雲をつかむようなもの。雲をつかむ努力を怠ると業績アップや経営安定化への確率は下がる。私は社員と目標について話し合う。確率を少しでも上げるために、社員の目標達成を支援する」
日刊工業新聞2018年7月26日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
島田社長の話を聞きプロスポーツクラブの経営も、企業経営と同じだと分かった。プロスポーツは「夢を売る」商売と言われるが、業績が伴わないと何の価値も提供できない。社会課題解決を目指して起業しても、情熱だけでは社会に貢献できない。地域創生の担い手を目指す企業にも、理念と社員の育成が必要だ。 新潟出身の島田社長には、アルビレックス新潟にもかかわってほしいです。

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