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医療の地域包括ケア支えるITサービス、どう差別化する?

医療の地域包括ケア支えるITサービス、どう差別化する?

ワイズマンは医療・介護連携サービス「メルタス」の使い勝手を追求

 病院や診療所、介護施設などの相互連携に用いられるITサービスの需要が堅調だ。医療や介護を地域で一体的に提供し、大病院への集中を分散する地域包括ケアシステムの構築を政府が推進していることが背景にある。ただIT各社からは、アプリケーション(応用ソフト)の機能面では差別化がしにくくなっているとの声も挙がる。各社はシステムの使い勝手の向上をはじめとする地道な施策を積み重ねてブランド力を高め、顧客からの信頼を深められるか試される。

 「地域包括ケアについての認識が向上し、日々、多職種連携が求められていることの現れではないか」。ワイズマン(盛岡市)商品企画部の伊藤宏光部長は、同社の医療・介護連携サービス「メルタス」が堅調な背景をこう分析する。メルタスは250法人を超える導入実績があり、今後も1年間当たり50―100法人への販売が期待できるという。

 2025年には、いわゆる団塊の世代が75歳以上となり、医療費の膨張が懸念される。政府は限られた医療資源を効率的に活用する観点で、地域包括ケアシステムを推進。大病院での治療は紹介患者を中心とし、一般的な外来受診については、かかりつけ医に相談する体制の普及などを目指している。加えて終末期医療の重要性を踏まえ、主治医とケアマネジャーの連携強化もうたう。こうした多職種間でのやりとりにITは欠かせない。

 レスコ(広島市中区)は、精神科向け診療支援システム「アルファ」が伸びる。約160の病院に導入済みで、2年後には200病院を見込む。地域包括ケアの普及を踏まえ、精神科クリニック用の電子カルテ「ワロク」も展開している。

 ただ藤川義雄レスコ社長は、「製品単品での差別化は難しくなってきている」と話す。例えば電子カルテは多くの事業者が展開しているが、医師にとってカルテへの入力が必要な項目はそれほど違いがないと考えられる。アプリの機能自体では独自性が出しにくくなる可能性も出てくる。

 そこで藤川社長は「(顧客に)自社のビジョンに共感してもらうことが必要」と指摘する。アルファとワロクの相乗効果を追求し、精神科医療全体の質を向上する姿勢を訴えていく方針だ。

 ワイズマンの伊藤部長は、メルタスの使い勝手を向上する考え。「顧客は連携の仕事自体に慣れておらず、メルタスも試行錯誤しながら使う。(操作や、情報の表示形式の)分かりやすさが重要だ」と気を引き締める。

 データベース(DB)で差別化する選択肢もある。米DBソフト開発会社の日本法人のインターシステムズジャパン(東京都新宿区)は、自社のDB製品「キャシェ」が福岡県豊前市の在宅歯科訪問情報ネットワークに採用された。さまざまなデータモデルに対応する点や、拡張性などが評価されたという。

 同社営業部の紺木孝之アカウントマネージャーは、「大きな自治体ではデータも大量になる。すぐにデータを活用できる体制が重要だ」と指摘。今後の拡販にあたり、米国ではニューヨーク都市圏での導入実績もある点なども訴求していく。
日刊工業新聞2018年7月19日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
多職種での連携や情報共有は、それ自体が目的になってはならず、医療効率化のための一手段として捉える必要がある。この観点で医療関係者をどれだけ支援できるか、IT各社の総合力が問われる。 (日刊工業新聞社、斎藤弘和)

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