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三菱UFJ信託、来年度「情報銀行」に参入

個人と企業を仲介し、データ活用後押し
三菱UFJ信託、来年度「情報銀行」に参入

先行する米国勢に対抗(三菱UFJ信託銀行本店)

 三菱UFJ信託銀行は18日、個人から購買履歴などのデータを預かり、本人同意の上で企業に提供する「情報銀行」の参入に向け、8月から実証実験を始めると発表した。個人は情報提供する企業を選択し、情報の対価として企業から金銭やサービスを受け取る。同行は2019年度中に参入する方針。

 実証は最大1000人規模で行う。参加者は同社が開発したスマートフォンのアプリケーション(応用ソフト)を用いて情報提供する。実用化すれば国内で初めてとなる。具体的には購買履歴や健康診断の結果など提供しても良いデータをアプリに登録し、企業は銀行を通じてデータを購入。個人は1企業あたり500―1000円程度を受け取る。

 情報銀行が検討される背景には、個人データがなし崩し的に使われている現状がある。米IT大手がスマホなどで提供する多様なサービスを利用する際には、個人データを提供せざるを得ない状況。しかもデータが、どのように利用されているかを知るすべはない。

 事態を重く見た欧州連合(EU)は「一般データ保護規則(GDPR)」を制定し、個人データは本人にコントロールする権利があることを明確化。5月に施行した。

 日本では経済産業省と総務省が、情報銀行を担う事業者の認定基準などを指針にまとめている。

 国内企業では富士通とイオンフィナンシャルサービスも17年に情報銀行の実証実験を実施し、同事業への参入機会をうかがう。三菱UFJ信託銀は、財産管理のノウハウを持つことから情報銀行事業との親和性が高いと判断した模様だ。米国勢に対抗するには官民連携が不可欠。一連の動きは個人データを安全で有効に活用できる体制づくりにつながる可能性がある。
(2018年7月19日 金融面)
長塚崇寛
長塚崇寛 Nagatsuka Takahiro 編集局ニュースセンター デスク
個人データの利活用はグーグルやアップルなど米IT大手が先行するが、個人の意思にかかわらずデータが流通している。個人と企業の間に仲介者が入ることで、個人を主体としたデータ活用の動きが広がりそうだ。

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