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QRコード決済広がる。どうなる技術・業務仕様の標準化

楽天やLINE、NTTドコモ、ヤフーも参入
QRコード決済広がる。どうなる技術・業務仕様の標準化

携帯・IT各社が力を入れるQRコード決済(イメージ)

 スマートフォンなどを使って簡単に支払いができる2次元コード「QRコード」の決済が国内決済市場に広がろうとしている。既存の楽天やLINEなどに加え、NTTドコモが4月に始めたスマホ決済サービス「d払い」でQRコード決済を採用。ヤフーも6月から提供を始めた。またLINEは6月に導入強化策を打ち出したほか、KDDIも2018年度中にQRコード決済サービスを提供する方針など、各社が力を入れだした。

 携帯・IT大手企業がQRコード決済市場に相次いで参入する背景には、導入コストの低さや貸金業登録が不要な点にあるといわれている。クレジットカード事業者と比べてカード発行コストがないなど、比較的安価にシステム運営できるほか、カード会社は貸金業登録が必要だが、QRコード発行会社であれば貸金業登録の必要性がない。

 このため、グループの経済圏を広げようとする企業が自社でQRコードを作り、これを読み込めるシステムを広げようとしてきた。これが、各社で異なる規格のQRコードの乱立につながっている。

 そこで動きだしたのが経済産業省だ。経産省は産学官の連携組織「一般社団法人キャッシュレス推進協議会」を2日付で立ち上げた。西日本豪雨の影響で少し時期が遅れる見込みだが、今夏にも創立大会を開く予定。初期メンバーにはメガバンク、携帯大手、IT、小売りなど法人会員145社、20団体会員が名を連ねた。テーマごとにプロジェクトを作り、18年度は7プロジェクトを予定する。

 その一つが「QRコード決済の標準化」だ。政府はキャッシュレス決済比率を15年の18%から、大阪が開催の名乗りを上げている25年国際博覧会(万博)までに40%に引き上げる目標を掲げている。

 QRコード決済で先行する中国などからの訪日外国人需要もにらみ、今後さらに普及・増加する可能性の高いQRコード決済について技術的・業務的仕様の標準化を図る。

 統一規格をめぐっては、これまでに協議会会員の3メガバンクでQRコード規格の統一を目指す動きがあるほか、会員のJCBも国内のQRコードとバーコードを使った決済サービスの統一規格の策定に着手している。

 規格が統一されれば、決済端末や販売時点情報管理(POS)レジを導入する大型の加盟店にとっては仕様変更の負担は避けられない。だが、レジ打ちの人が利用者に合わせて決済手段を毎回選択する手間が省け、QRコード発行会社にとっては他の発行会社が開拓した加盟店での利用も可能になり、加盟店拡大につながるなどの利点もある。
日刊工業新聞2018年7月17日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
ニッセイ基礎研究所の福本勇樹主任研究員は「経産省は海外からQRコード決済の仕組みが持ち込まれ、情報を捕られることを危惧していると思う。国内の金の流れの情報を守る意味でも国内企業が協力して統一した仕組みを作ろうということだろう」としている。 (日刊工業新聞社・山谷逸平)

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