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ビジネスモデルの変革に挑む日本郵船、環境に注力する3つの理由

内藤忠顕社長に聞く
ビジネスモデルの変革に挑む日本郵船、環境に注力する3つの理由

内藤忠顕社長

 日本郵船がビジネスモデルの変革に挑んでいる。4月に定期コンテナ船事業を分社化して従来、主力としてきた貨物輸送から、前後の物流やターミナル周辺などに事業領域を広げようとしている。今期からの中期経営計画では、環境への取り組みや情報通信技術(ICT)の活用を掲げて海運業界を“半歩先”でけん引すると志す。内藤忠顕社長にグループの成長や、最新技術への期待などを聞いた。

 ―日本貨物航空(NCA)の不適切な整備に起因する運航停止が長引いています。
 「迷惑をかけ、申し訳ないと思っている。安全を最優先するために(全11機の運航停止を)決断した。原点に戻って立て直す。NCAの活用には多くのイメージを持っており、将来、グループの宝物になる可能性がある」

 ―海運3社によるコンテナ船会社オーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)が今春誕生しました。
 「ソフトを重視し、顧客が望むサービスを提供したい。(営業開始時に事務作業のトラブルが発生し)最初のオペレーションが少し重かったが、船出としてはまずまずだ。(世界的な再編が進んで)プレーヤーの数が減った。ヤマト運輸の宅急便に負けないようなサービスを出していけば、適正価格に収斂(しゅうれん)していける」

 ―郵船ロジスティクスを完全子会社化し、物流を中核とする体制を整えました。
 「ヘビーアセットには懲りた。足元を見直し、しっかり利益を出せる体制にする。(物流業務委託や一貫物流などの)サービスを提供できるようにしていかなければならない」

 ―グリーン(環境)に注力する狙いは。
 「一つめは世界的なルール対応。選択肢を間違えないようにしなければならない。二つめは省エネルギー。ICTも活用し、いかに効率化できるかだ。三つめは商売。バイオマスや発電機のような重量物、水素の運搬。風力発電の設置船(SEP船)も考えている。パートナーが大事だ」

 ―運航データを海事産業全体で活用する仕組みも稼働しました。
 「(世界に)出遅れたら負けるのは確実。スタンダードを握るのは大事だ。船上データ交換のプロトコルを作る際、日本人になじみやすいものにできる」

 ―状態監視保全や自律航行技術で船上の仕事は変わりますか。
 「機械化で技術者の役割は変わる。不具合の原因がしっかりと分かるようになり、求められる技術は高くなるのではないか」
日刊工業新聞2018年7月12日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
内藤社長は「社会に求められる会社でありたい」と繰り返した。企業が営利を追求することで、社会が発展する従来のモデルに限界が近づいていると感じているそう。社内に対して「社外の皆が郵船を褒めてくれるから社員がおごってしまう」と危機感を隠さない。企業のあり方、郵船のあり方。この羅針盤はデジタル化が難しい。 (日刊工業新聞社・小林広幸)

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