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【連載・沖縄でつくる#04】半導体製造装置、気温差がコストと開発に寄与

ナノシステムソリューションズ(沖縄県うるま市)
【連載・沖縄でつくる#04】半導体製造装置、気温差がコストと開発に寄与

本社工場(沖縄県うるま市)で製造するウエハー分析装置

 ナノシステムソリューションズは、半導体製造設備であるマスクレス露光装置やウエハー検査装置のメーカー。国内外のデバイス、ウエハーメーカーに向け、光学的な加工・分析技術を核に製品を展開している。

 沖縄の本社工場は現在、新製品発売の効果もありフル稼働。2年分ほどの受注残を抱える。2014年の進出当初に2億―3億円だった売上高は、10億円台後半での安定が視野に入る。「沖縄で足腰をつくることができた」と赤星治副社長は評価する。

 好調要因の一つが台湾への展開。台湾を代表する大手デバイスメーカーに口座を開き、直取引している。上場企業が前提の取引条件も、沖縄振興開発金融公庫からの資本性ローンなどで信用性を高めて勝ち取った。沖縄に来てからの成果だ。

 那覇空港を中心とした深夜の国際貨物便を使えば、夜間に積載した製品や部品が現地へ翌朝に届けられる。移動距離と時間の短さは輸送の振動を嫌う精密機器に都合が良い。

 工場周辺の交通、電力インフラは充実を待つ部分もある。だが、人材募集における“勤務地・沖縄”は県外から目を引き、「求人面でも沖縄ブランドは強い」と実感する。

 温度勾配に対応するノウハウも得た。工場内のクラス100、1000のクリーンルームは室温23度Cに維持するが、東京に比べてエネルギー費を30―40%低減できた。沖縄の年間平均気温が設定温度と近いためだ。

 開発でも温度が寄与した。重要部品であるレンズの反射防止膜が温度差でわずかに伸縮し、精度に関与することが判明。「気温が安定した沖縄に拠点を置いたからこそ、目を向けられた」と、赤星副社長は沖縄でのモノづくりに自信を深めている。

【企業概要】▽企業名=ナノシステムソリューションズ▽本社=沖縄県うるま市▽代表者=芳賀一実社長▽製造品=半導体製造・分析装置


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日刊工業新聞2018年7月12日
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
沖縄の新しいモノづくりを象徴する、半導体と医療。ナノシステムは前者を代表する1社です。

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