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東京医科歯科大がキャンパス内で駐車場ビジネス

安定収益を確保
 東京医科歯科大学は国立大学の規制緩和を活用し、9月1日から駐車場事業者への土地貸し付けを始める。駿河台キャンパス(東京都千代田区)の乗用車10台分で、年数百万円の賃貸収入が容易に得られる見込みだ。従来の不動産活用は大学業務に限定されていたため、これまでは学内の無料駐車場としていた。周囲の飲食店や別の病院、調剤薬局の利用者にニーズがあり、事業者の問い合わせは約20社に上っている。

 貸し付けるのはJR御茶ノ水駅すぐの同大研究所などがある地区210平方メートルで、納品業者らが無料で駐車に使っていた。また繁華街の道路沿いで駐車スペースが不足する地域のため、関係者以外の無断駐車もみられた。

 これを駐車場事業者への賃貸に変える。通常は国立大にない固定資産税が発生するが、それを超えて年数百万円の安定収入が確保できる。5年間の契約で企画提案を公募中だ。

 同大の中心の湯島キャンパス(同文京区)は、今回の場所と神田川を挟んで逆にある。医学部付属病院などがあるためPFI(民間資金を活用した社会資本整備)方式で立体駐車場を整備、外部委託で運営している。患者割引はあるが有料のため今回、両地区で整合性をとる狙いもある。

 国立大の不動産の賃貸は従来、業務や福利厚生に関わるものに限定されていた。しかし文部科学省は2017年度から、国立大の財務基盤強化のため規制を緩和。業務などと関係ない案件で自己収入を確保することが可能になった。

キーワード/国立大の不動産活用


Q 国立大の土地を民間が活用するケースは、生協やコンビニエンスストアで見られるのでは。

A 国立大の不動産は従来も、業務や福利厚生に関係する内容で貸し出せた。大学発ベンチャーが有償で入居するインキュベーション施設は、大学の研究成果活用という業務関連だ。商業施設は学生や職員の福利厚生が目的とされる。

Q 規制緩和で可能になったのは。

A 業務と関係ないケースの貸し出しで文部科学相の認可がいる。容易なのは駐車場だが、賃貸マンションや商業施設など、国立大が所有する土地に、民間が建物を建てて運営する形も想定されている。

Q 東京工業大学の田町駅近くの高層ビル構想や、筑波大学のショッピングセンター計画はどうか?

A 一部の業務利用と福利厚生という従来形の手法で、規制緩和によるものではない。とはいえ国立大の資産活用による自己収入増としては、大型で魅力的だ。なお建物も賃貸可能だが老朽化するため、数十年単位での賃貸計画は土地が中心となりそうだ。
                    
日刊工業新聞2018年7月12日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
たいした広さではなくても、土地活用によって容易に国立大の収入は増やせる事例、というのが、この記事の重要な点だ。「都市部でないとね…」との声も聞かれるが、必ずしもそうではない。続報を、乞うご期待。

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