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幻の「マヨラナ粒子」の存在を実証、量子コンピューターの進化に期待

京大、東大、東工大の研究チーム
幻の「マヨラナ粒子」の存在を実証、量子コンピューターの進化に期待

世界最先端の量子コンピューター「IBM Q」

 京都大学大学院理学研究科の笠原裕一准教授と松田祐司教授らは11日、東京大学、東京工業大学と共同で、理論的に示されながら決定的な存在証拠がなく、幻の粒子とされてきた「マヨラナ粒子」の存在を実証したと発表した。

 位相幾何学を使った量子コンピューターの計算に有効とみられる。同粒子を制御できれば、ノイズに強く高温で高速計算できる量子コンピューターの実現が期待できる。

 マヨラナ粒子は電荷など正負の属性が逆の反粒子が自身と同一で、電子の半分の自由度を持つ。研究グループは磁性絶縁体を一定温度下で磁場を変化させ、熱の移動を測定した。ある範囲の磁場で、熱ホール伝導度が量子力学の規定値の半分になることを発見。このとき試料の端を粒子が移動するエッジ流がみられ、電気は運ばず熱は運ぶ性質と自由度から、この粒子がマヨラナ粒子と断定した。

 従来の期待より高温の5ケルビンで観測できたため、応用時に高温動作が期待できる。研究成果は12日付で英科学誌「ネイチャー」電子版に掲載される。

日刊工業新聞2018年7月12日
梶原洵子
梶原洵子 Kajiwara Junko 編集局第二産業部 記者
約80年前にイタリアの科学者エットーレ・マヨラナによって存在を予想された粒子で、近年探索競争が活発化していました。マヨラナ粒子は電気的に中性で、粒子自身がその反粒子でもある。理論的には量子状態を安定的に保存しておくことができるとされるため、量子コンピューターへの応用が期待されています。

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