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新興企業が睡眠を気にする理由、帝人の睡眠ビジネス担当者が語ったこと

仕事が楽しすぎる人こそ積極的に休もう
 社員の睡眠に企業が大きな関心を寄せている。福利厚生で睡眠改善サービスを利用できる企業も増えてきた。長距離運転ドライバーのような睡眠の重要さが明白な業種だけでなく、運用型ゲーム開発のような新しい業界も睡眠に注目しているという。

 帝人で企業向け睡眠改善サービスを担当するデジタルヘルス事業推進班長の濱崎洋一郎氏は、「4月のサービス発表後、予想と違う業種から引き合いが多くて驚いた」と話す。

 同社のサービスは、個人の睡眠傾向に合わせて改善策を提供する。アンケートなどで個人の睡眠傾向を分類し、睡眠傾向を分類。軽度の不調にはスマートフォン用アプリで改善策を助言し、緊張して眠れない人には、腹部に巻くベルト型センサーで呼吸パターンを測定し、睡眠を促す音楽などを流す。

 当初は運送業や建築業からの引き合いを想定していたが、強く興味を示したのは、Eコマースや運用型ゲームといった24時間・365日サービスを提供するIT企業だった。こうした企業は休養のリズムが狂いやすい上、「ゲーム業界には、好きで私生活も仕事でもゲームをする人が少なくない」(濱崎氏)。仕事も遊びもやりすぎてしまい、気づかないうちに睡眠不足で体と心に負荷がたまる。好調な時は問題が出てこないが、仕事でつまずいた時に心が折れやすくなる。

 そのため、会社側が「仕事に積極的なのはありがたいが、計画的に休みを取るように介入しないと心配だ」と考えるようになったようだ。気づかずに仕事をやりすぎるのは、ゲーム業界に限らず、好きな事を仕事にした人にも起きる可能性がある。「意識的に休みを取ってほしい」(濱崎氏)と呼びかける。

 一方、帝人へ直接連絡をくれた中小企業の経営者らもいた。事業の進捗や資金繰り、従業員の管理などの重圧を一人で受けているため、「社長向けに、もっと手厚いプランがあってもいいのかもしれない」(同)と話す。

 政府統計などの調査では、職種の違いによって睡眠時間や質に違いがあることが報告されている。運転者のように長時間の注意力の求められる職種や、接客や介護のような感情労働、そして知的労働。「今後、個人の睡眠データの分析が進むことで、業種ごとに最適なきめ細かな睡眠支援ができるようにしたい」(同)という。

 企業の中で睡眠に問題があるのは、5人に1人程度だとみられており、「まずその人を見つけ、しっかりケアすることが大事」(同)と説明する。

 自分の睡眠が気になる人は、自分で簡単に調べる方法もある。濱崎氏は睡眠改善インストラクターの資格を持っており、「まず自分の睡眠習慣を知ることから始めてほしい」と話す。まず、何時に寝て、何時に起きたか毎日記録を付ける。平日と土日の睡眠時間の差が大きいほど、睡眠不足の負荷がたまっている。平日に15分ずつでも早く寝る習慣を積み重ねれば睡眠は変わるという。

 だんだん寝苦しい季節になる中、良い睡眠を考えるのにちょうどいいタイミングかもしれない。

帝人の濱崎洋一郎氏
梶原洵子
梶原洵子 Kajiwara Junko 編集局第二産業部 記者
顧客は福利厚生の手厚い大企業が多いと予想していたので意外でした。データがたまれば、「このタイプの人はこんな睡眠の取り方がいい」とわかるようになるかもしれません。

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