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「初乗り410円」で東京のタクシー事情はどう変わった?

「ちょい乗り需要」を喚起も輸送距離は短く
 東京で、タクシー初乗り運賃410円が導入されて以降、サービス産業(第3次産業)活動指数のタクシー業指数が上昇している。

 下のグラフは、1989(平成元)年以降の、東京(注1)のタクシー輸送人員数だ。タクシーの利用者数は、2007年12月の初乗り運賃の値上げ以降下落し、リーマンショックが追い打ちをかけて、長期的に低迷しているのがわかる。その対策として、2017年1月30日から、東京の初乗り運賃の大幅値下げが実施された(それまでの730円から410円へと値下げ)。(注2)
                    

             

 上のグラフは、東京都でのタクシー実車率の推移を示している。振り返って見れば、2016年後半あたりから緩やかな上昇トレンドが始まっているように見えるが、2017年の1月末に初乗り運賃410円が導入されて以降、上昇の勢いをやや強めており、タクシー利用が促進された様子が窺える。
           

 利用者が増える一方で、利用客一人当たりを輸送した距離は短くなっているようだ。上のグラフは、全国の一人当たり平均輸送キロを示している。

 元々緩やかな下落トレンドにあったが、東京で初乗り運賃410円が導入されて以降、一段水準が下がったように見える。このグラフは全国のデータによるものであり、東京だけのデータであれば、より明確に下落するのかもしれない(右上の円グラフからわかるように、輸送した人員数×輸送した距離で求められる輸送人キロは、東京都が6大都市の50%近くを占める)。

 これらのデータから、東京での初乗り運賃の引き下げは、「ちょい乗り需要」を喚起したのだと考えられる。第3次産業活動指数のタクシー業指数は、東京での輸送人員数の変化を指数化していることから、2017年2月に指数が急上昇しており、影響が分かりやすく現れている。

 初乗り運賃410円導入によって、利用者数の回復はそれなりにうまく行っているようだが、タクシー業界の業況が著しく好転したという評価をするには、一定の留保が必要だ。この料金改正の影響が落ち着くまでは、タクシー業指数の推移を評価する場合には、輸送人員数だけでなく、売上に直結する輸送人キロ(輸送人員数×キロ)の推移を見る必要もあるのかも知れない。
                

(注1)東京23区、武蔵野市、三鷹市。
(注2)同時に、初乗り距離がそれまでの2.0kmから1.052kmへと短縮された。新運賃では、約2.0kmまでの運賃は引き下げになり、約2.0kmから約6.5kmまでの運賃は引き下げになる部分と、引き上げになる部分があり、約6.5km以上の運賃は引き上げになった。
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
配車の利便性向上やキャッシュレス決済など今後、価格だけではない競争軸がより重要視されていくだろう。

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