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東工大、ノーベル賞受賞者らが若手研究者に“特別塾”

「基礎研究機構」を新設、短期集中で
 東京工業大学は2018年度中に、若手研究者育成を担う「基礎研究機構」を新設する。助教らが順に3カ月程度、所属研究室を離れ、授業や他の用務なしにここで研究に集中。ノーベル賞を受賞した大隅良典栄誉教授をはじめ、一流の研究者の“塾”を開き、その研究手法を体得してもらう。さらに若手が専門分野を超えて学際的に集まる利点を生かして、未来社会のイノベーションに向けた新たな研究ユニット立ち上げにつなげる。

 新組織は、自由な発想で新領域を開拓する意味で名称に「基礎」を入れた。産学連携のトップランナーなど若手の手本となる多様な研究者の塾を開く。若手は通常、所属する研究室主宰教員の指示に追われたり、研究資金獲得に時間を取られたりしがちだ。ここではそれらを離れ、一流研究者と直に接し、優れた研究の作法を身に付けることができる。

 一方、東工大は科学技術で描く未来を学外の人たちとも議論する「未来社会デザイン機構」を設置する計画がある。環境や政策など、分野横断的な議論に若手が参加し、社会的な期待や責任を自覚しながら、独創的な研究をする人材となることを目指す。さらに議論を基にした戦略研究ユニットを編成し、次世代の研究力向上につなげていく。

 
日刊工業新聞2018年6月21日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
指定国立大となった5大学では、どこも若手研究者の育成についての独自策を掲げている。不安定雇用が増えてしまった若手をどう支援するかは、大学の次世代の研究力を決めるからだ。東工大のケースは3カ月程度、助教らが所属研究室を離れてスター研究者の塾に入る点がユニークで、若手を大きく刺激するだろう。通常の大学に対する若手支援は科研費の活用など限られてしまうが、指定国立大であれば国は、社会は、このような独自策を期待している。

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