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不妊治療に光、胚の着床メカニズムが明らかに

東大が解明、診断や治療法開発への応用に期待
 東京大学医学部付属病院女性診療科の広田泰講師らは、受精卵が成長した細胞「胚」が、酸素の供給が不足すると誘導されるたんぱく質「HIF」の働きにより子宮内膜に着床することを明らかにした。HIFが子宮で発現しないマウスでは、不妊や産子の減少が起きた。不妊症の診断や治療法開発へ応用が期待される。

 研究チームはHIFを構成するたんぱく質のうち、「HIF1α」と「HIF2α」に着目。子宮全体で両たんぱく質が欠損したマウスでは、出生数が減った。特に、子宮全体のHIF2α欠損マウスは1匹も出産せず、完全な不妊であった。

 さらに詳しく調べると、子宮内膜のうち、胚と接する「子宮内膜間質」でHIF2αが発現しないマウスが不妊になった。

 着床は、胚が子宮内膜間質と接着し、子宮内膜の中に入りこんでいくことで起きる。子宮内膜の表面は低酸素状態になっていると推測され、HIFは胚浸潤の調節因子として働いていることが明らかになった。
日刊工業新聞2018年6月19日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
成果は米科学誌のジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーションで発表されました。

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