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日本の半導体装置の投資額、6割増の100億ドルに

SEMI予測、世界でも前工程は4年連続で成長
日本の半導体装置の投資額、6割増の100億ドルに

投資額が増える東芝メモリ(写真は四日市工場)

 米SEMI(カリフォルニア州)は半導体ウエハーに回路を形成する前工程の装置への投資額が、2019年までにグローバルで4年連続成長するとの予測を明らかにした。18年に前年比14%増、19年は同9%増となる見通し。過去に4年以上連続で成長したのは、93―97年の一度しかないという。

 国策として半導体の自給率向上を目標に掲げる中国は、18年に同65%増の115億ドル(約1兆2000億円)程度となり、19年には同57%増の約180億ドルになる見通し。両年とも約60%を米インテルや韓国SKハイニックスなど外資系企業が占める。

 日本は18年に同60%増の約100億ドルになると予測。増額が大きい企業として、東芝やソニー、ルネサスエレクトロニクス、米マイクロン・テクノロジーを挙げた。

日刊工業新聞2018年6月14日 



アルバックは“地産地消”目指す


 「昔のシリコンサイクルはもう何年もなく、かなりの成長率で伸び続けている」―。アルバックの近藤智保執行役員半導体装置事業部長は、スーパーサイクルの実感をこう語る。IoT(モノのインターネット)などの普及に伴い、グローバルで半導体製造装置の需要が伸びる中、2021年をめどに主力であるスパッタリング装置の生産台数を倍増することを決めた。

ウエハー上に回路材料の層を作るスパッタリング装置は、半導体ウエハーに回路を形成する前工程で使われる。

 現在は同装置を日本と韓国で生産しているが、いずれの拠点も「100%の稼働状況」(近藤執行役員)のため、18年内にも台湾での生産を始める。

 これまでアルバックの台湾拠点では薄型ディスプレー(FPD)製造装置や、半導体の組み立て・検査をする後工程で使う装置を生産していた。近藤執行役員は「台湾でのスパッタリング装置の需要が高まっている」と増産の背景を説明する。

 半導体製造装置・材料の国際団体である米SEMI(カリフォルニア州)の調査によると、17年の台湾の半導体製造装置の市場は114億ドル(約1兆2000億円)と、韓国に次いで世界で2番目の市場となっている。スパッタリング装置の増産に伴い、現在10―20%の同社の世界シェアを2倍に引き上げたい考えだ。

 これまで台湾向けのスパッタリング装置は日本で生産していたが、台湾での生産開始を機に装置の“地産地消”を目指す。生産開始に向けて準備を進めるのが部品の調達だ。近藤執行役員は「国内と同じ品質を保ちながら、パーツの現地調達率を50%以上にする」と力を込める。

 現在、同装置の生産比率は韓国と日本が5割ずつ。1年ごとに1割ずつ台湾での生産割合を引き上げ、21年にも韓国5割、台湾3割、日本2割にする計画。そのほか日本や韓国の製造現場でも半導体製造装置の組み立て方法を工夫するなどして、生産能力向上のための取り組みを進める。

 さらに国策として半導体の自給率向上を目標に掲げる中国でのシェア拡大も目指す。同社は中国のシェアは現状は高くないとした上で、ロジック半導体について「中国市場は世界の最先端技術に対して2、3世代古い。そこに割り込んでいくのは逆に難しい」(近藤執行役員)と分析。一方、半導体メモリー市場については「メモリーで伸びるというシナリオが描ける」と期待感を示す。
(文=福沢尚季)

日刊工業新聞2018年4月27日

日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
SEMIの調査は、世界の前工程工場の投資情報をSEMIが収集・分析している。半導体は夏季オリンピックが開催される年の前後に需要のピークを迎え、その後一気に落ち込むといった変動を繰り返す「シリコンサイクル」が起こることで知られる。今回の調査結果は、半導体需要が長期的に拡大し続ける「スーパーサイクル」に入った裏付けの一つになりそうだ。 (日刊工業新聞第一産業部・福沢尚季)

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