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住友化学の構造改革は身を結ぶか

電池材料などROI10%へ
 住友化学は2021年度までに電池材料などエネルギー・機能材料部門の投下資本利益率(ROI)で10%(18年度予想は5%台)を目指す。近年リチウムイオン二次電池用セパレーター(絶縁材)などの増産投資やM&A(合併・買収)を進めたほか、課題事業の撤退など構造改革も断行。19―21年度の次期中期経営計画の期間でその成果を着実に収穫したい考えだ。

 エネルギー・機能材料部門の投下資本は約2300億円。税引き後営業利益から逆算すると、コア営業利益(非経常的な損益を除いた営業利益)を300億円(18年度予想比50%増)に伸ばすことでROI10%を達成できる。住友化学は現中計でROI7%を目標に掲げてきたが、5事業部門のうちエネルギー・機能材料と情報電子化学が目標を下回る見通し。2部門の利益改善が今後の大きな経営課題となっていた。

 現中計ではセパレーターの生産能力増強に約250億円、機能性樹脂のポリエーテルサルホン(PES)の増強に数十億円を投じた。

住友化学専務執行役員・岩田圭一氏に聞く


 住友化学専務執行役員の岩田圭一氏にエネルギー・機能材料部門の戦略を聞いた。

 ―近年は投資が先行していました。

 「セパレーターは韓国・大邱市で年産3億平方メートルの設備を立ち上げた。正極材料の田中化学研究所も子会社化した。PESの第2プラントを千葉県に建設した。(接着剤原料の)レゾルシンでは念願だった川下分野へ進出すべく、レゾルシン樹脂の米国企業を買収した。この3年間で650億円(意思決定ベース)を投資した。さらに18年度は400億円の投資を決める」

 ―19年度からの次期中計のイメージは。

 「手を打ってきたコア事業のセパレーター、スーパーエンジニアリングプラスチックス(機能性樹脂)、レゾルシン、アルミナで相当な収益を稼ぎたい。スーパーエンプラは自動車の金属から樹脂化に加えて、5G(第5世代通信)に合う特性を持っているので時代の追い風がある」

 ―15年に発足した新しい部門です。

 「いよいよ部門として新しいカルチャーを打ち立てる時期だ。文化の一つは『先行投資』だ。実プラントがないと顧客の評価を受けられない。技術に対する見方がより厳しく正しくないと、後から取り返しがつかない」
日刊工業新聞2018年6月7日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
電気自動車(EV)などの電動車シフトや車両の軽量化といった追い風がエネルギー・機能材料部門に吹きつつある。19年度以降は各製品の需要拡大が確実視され、大幅な増益を見込む。 (日刊工業新聞社・鈴木岳志)

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