和傘を無料貸し出し…訪日外国人の熱中症対策で狙うは“SNS映え”

日本気象協会がプロジェクト展開

訪日外国人向けに、熱中症リスクや対策方法を伝える取り組みを開始(庭園での和傘の無料貸し出し)

 年間約数百人から時には1000を超える死者を出す熱中症。その数は、温暖化や都市部のヒートアイランド現象などの影響、また高齢化などを背景に、年々増加傾向にある。日本気象協会は、熱中症を甚大な気象災害の一つと位置付け、2013年に「熱中症ゼロへ」プロジェクトを立ち上げた。企業や自治体と連携した情報発信や啓発活動を強化。5月から、増え続ける訪日外国人を対象とした取り組みも始めた。  熱中症による2017年6―9月の死者数は、574人。同5―9月の全国での熱中症による救急搬送人員数累計は、5万2984人にのぼる。「熱中症という言葉は周知されたが、正しい知識はまだ広まっていない」と話すのは、「熱中症ゼロへ」プロジェクトの曽根美幸プロジェクトリーダーだ。  日本気象協会が熱中症対策に取り組み始めたのは09年。携帯型の熱中症計を発売し、大きな反響があった。従来の熱中症計は数万円と高価な上に据え置き型で、「職場ごとや個人が持ち歩くことは考えられなかった」(曽根リーダー)。それを独自の計算式を組むことで手のひらサイズに小型化し、2000円台の低価格で提供。これまでにシリーズ累計で70万個を売り上げた。  熱中症の発症には環境以外の要因も多く、個人差がある。そこで、活動内容などを考慮してリスク判断をするシステムを名古屋工業大学や東北大学と共同開発。17年に「熱中症セルフチェック」としてウェブで無料公開した。スマートフォン(スマホ)などで取得した位置情報による地域の気温や湿度に加え、年代と活動レベルを入力することで、個人ごとに高精度に危険度を予測できる。  活動時間の目安や失われた水分量を視覚的に表示し、適切な休憩や水分補給など「行動」につなげる。工事現場や工場では「誰しも、作業のキリがいいところまでやってしまおうとつい無理をする。休憩を促すには、根拠がある明確な基準を示す必要がある」(同)。  その日の気温予想や活動予定をもとに、事前に作業計画に組み込めば、安全で効率的な作業が可能だ。建設業界に始まり、最近は工場や学校、高齢者施設など幅広い分野に利用が広がっている。  さらに18年度に「熱中症ゼロへ」プロジェクトが注力するのが、訪日外国人向けの対策だ。16年に日本気象協会が実施した在留外国人200人を対象とした調査で、「日本で熱中症の症状を経験した」と回答した人は75%を超えた。「さらに衝撃だった」(同)のは、タイやインドネシア、エジプトなど暑さに慣れているイメージのある地域の出身者でも60%以上が「日本の夏は母国より過ごしにくい」と答えたことだ。  高温多湿で、緑地も少なく、海外の暑さとは違う特殊な日本の夏。曽根リーダーは「危険を知り、対策を周りの人にも伝えてほしい」と、外国人が興味を持ち、SNSでも拡散が期待できる和傘の無料貸し出しや折り紙のしかけを付けたリーフレットを考えた。

続きを読む

関連する記事はこちら

特集