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空前の設備需要、「納期の乱れ」深刻化

「もう打つ手がない」
 空前の設備需要に沸く今、人手不足、部品不足に起因する納期の混乱から、多くの教訓が学べる。しかも、働き方改革の精神を後退させることなく、実践へと移しながら成し遂げる手だてを講じるべきだ。

 生産財受注が活況を呈している。代表格が工作機械だ。業界団体の日本工作機械工業会(日工会)の調べによると、2017年度の工作機械受注は統計開始以来初めて1兆7000億円を突破し、1兆7800億円に達した。日米欧中のすべての主要市場がおしなべて盛況という、近年まれに見る地合いだ。

 特筆すべきは、産業の空洞化、淘汰(とうた)で縮小傾向が続いてきた内需だ。3月単月は、実に91年9月以来の26年6カ月ぶりに700億円の大台を超えた。つまり、バブル景気の水準に並んだことになる。

 また、半導体産業は約4年ごとに好不況を繰り返す「シリコンサイクル」から、長期需要が続く「スーパーサイクル」に昇華。このため半導体製造装置の需要が沸騰している。結果、工作機械は半導体製造装置や他の生産財と共通する基幹部品の取り合いで、人手不足も重なり、納期に混乱が生じている。

 工作機械産業も、数年周期で好不況の波があるシクリカル産業の典型で、各社の投資判断は極めて慎重だ。実際、旺盛な設備需要があった07年に生産能力増強に動いた部品メーカーがあったが、翌年リーマン・ショックが直撃し、辛酸をなめた。

 人手不足は協力会社でもある中小企業でより深刻だ。ある生産財幹部は顧客の言葉が胸に刺さる。「複数の工程をまとめたり機械に置き換えたりする複合化、自動化の投資をし、残業もさせた。もう打つ手がない」。

 生産財各社が複合化・自動化技術を積極投入している。労働人口減少の中、生産性や品質を向上させるには有力な方向だ。しかし、現状はこれを上回る速度で事態は進行している。

 歴史は繰り返す。現在の市況はいつかピークを越え、停滞し、また好転するはず。今回の教訓をいかに生かすかで真価が問われる。
日刊工業新聞2018年5月16日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
工作機械向け部品では、新たに設計が必要な製品は納期が6カ月―1年のびるとも言われる。大手は設備投資も実施しているが受注動向の細かな変化にも気をつかっている。

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