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MUFJ、収益基盤の構築へ11の構造改革とは?

海外シフト鮮明に
 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が、収益基盤の再構築に向けてアクセルを踏み込む。今年度に始動した3カ年の新中期経営計画では11の構造改革で収益体質を改善するとともに、事業本部の改編に着手。海外事業をテコにグループの新たな成長モデルを確立する。超低金利環境やデジタル技術の進展で、銀行業務はパラダイムシフトの渦中にある。国内トップバンクグループの改革は新たなステージに入った。

 新中計では「大胆な構造変革にスピード感を持って取り組む」(平野信行社長)ため「11の構造改革の柱」を打ち出した。デジタル技術の高度化、銀行・信託・証券の連携によるソリューション提供、法人向け銀行業務と投資銀行業務の一体運営などが軸となる。

 構造改革をグループの総合力で推進しようと、7月に五つの事業本部を六つに改編する。企業の国籍や規模を問わず海外事業を一手に担っていた国際事業本部を解体。海外部門は大企業と中堅中小事業に部門を分ける。

 顧客部門を「日系」「非日系」と「個人・中堅中小企業」「大企業」の4象限に区分した6事業本部制で、新たな収益機会の創出と効率化を両立する。平野社長は「旧来のビジネスモデルでは厳しい。構造改革で成長軌道への回帰に道筋をつける」と強調する。

 日銀の超低金利の継続を受け、中計では国内の法人・リテール事業は営業純益で横ばいを見込む。このため海外事業の重要性はさらに高まる。だが足元は米国の利上げなどによる資金調達コストの増加や大型M&A(合併・買収)向け融資の減少を受け、18年3月期の国際部門は10年ぶりの減益で着地した。

 新中計では海外を成長エンジンに据える。特に注力するのが個人や中堅中小企業向けだ。新設した「グローバル・コマーシャルバンキング事業本部(GCB)」がこれを担う。

 GCBの中核となるのがMUFGユニオンバンク(米国)やアユタヤ銀行(タイ)、ダナモン銀行(インドネシア)といったパートナー銀行だ。パートナー銀行所在国の人口は合計で8億5000万人。特に東南アジアでは銀行サービスの伸びしろは大きい。MUFGと各行がノウハウを共有してシナジーを追求し「巨大市場で存在感を高めていく」(徳成旨亮執行役専務グループCFO)考え。

 例えば海外の自動車産業向けでは地場の部品メーカーやディーラー、購入者にパートナー銀行が、完成車メーカーにMUFGが融資するなど、サプライチェーン全体のファイナンスをグループで囲い込む。GCBは20年度の営業純益を3200億円に設定。グループ全体の営業純益の約2割をGCBで稼ぐ計画。
  

(文=長塚崇寛)
日刊工業新聞2018年5月22日
長塚崇寛
長塚崇寛 Nagatsuka Takahiro 編集局ニュースセンター デスク
非日系の大企業事業を担う「グローバルCIB事業本部(GCIB)」も牽(けん)引役として位置付けており収益構造の海外シフトが鮮明になりそうだ。

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