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刑務所の作業員が減って倒産した!?

紙袋メーカーのアートバツグ、高い製造委託先が増える
刑務所の作業員が減って倒産した!?

法務省によると、現在、全国77の刑事施設で刑務作業が実施されている(写真はイメージ)

 アートバツグは、1961年創業の老舗の紙袋の製造会社。主にアパレルや化粧品向けのショッピングバッグを扱い、高級ブランドが使う高価格帯の製品に強みを持っていたが、4月20日に東京地裁へ自己破産を申請し、25日に破産手続き開始決定を受けた。

 外注を積極的に活用し、中国での海外生産が伸長した08年12月期には年売上高約14億1600万円を計上した。しかし、このころから国内での生産能力の低下から受注に十分に対応できなくなり、その後は売上高が減少していった。

 主要な製造委託先となっていた刑務所の作業人員減少が影響した。その結果、委託料の高い製造委託先との取引が増加し、収益を圧迫した。

 その後も円高に伴い一部デリバティブ損失が発生したほか、主力得意先の破たんや値下げ要請などで収益性は低下。生産力の向上を目指しベトナムの協力工場での生産も模索したものの奏功しなかった。

 さらに、複数の従業員が退職し同業他社に移籍したことで顧客離れが発生、16年12月期の年売上高は約9億1000万円に減少した。

 同時に、退職金の支払いなどもかさみ、2期連続の最終赤字を余儀なくされた。資金繰りが限界に近付く中で、金融機関から返済猶予を受けながらスポンサーによる再建を模索したが、財務が破たんした企業に手を差し伸べるスポンサーはついに現れず、1月12日には事業を停止した。

 人手不足による倒産が増加傾向にあるが、その影響はコスト面のみにとどまらない。複数の従業員の退職ともなれば、信用面での影響は計り知れない。従業員の給与が遅配していた可能性が高く、会社の求心力が弱まっていたものとみられる。この段階では、既に倒産へ向けたカウントダウンは始まっている。従業員の動向も、取引先の与信を判断する上では重要な情報なのである。
(文=帝国データバンク情報部)
<企業メモ>
アートバツグ(株)
住 所:東京都北区昭和町2−16−3
代 表:宮嶋憲一氏
資本金:1000万円
年売上高:約9億1000万円(16年12月期)
負 債:約6億7600万円
日刊工業新聞2018年5月15日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
法務省によると、現在、全国77の刑事施設(刑務所,少年刑務所及び拘置所)で刑務作業が実施されており,約4万8千人が就業しているという。刑務作業に従事する者としては,刑法(第12条第2項)上の所定の作業として就業している懲役受刑者又はいわゆる換刑処分として就業する義務のある労役場留置者のほか,就業の義務はないが申出により就業することができる禁錮受刑者及び拘留受刑者など。木工,印刷,洋裁,金属及び革工などの業種から,各人の適性等に応じた職種が指定されて就業しているようだ。委託料の相場はどの程度なのだろう?

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