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中国の“ロボット爆買い”はいつまで続く?

14年の産業用販売台数は前年比5割増。自動車の過剰生産に警戒感も
中国の“ロボット爆買い”はいつまで続く?

来場者の注目を集めている安川電機のロボットによる龍の舞

 【上海(中国)=藤崎竜介】中国ロボット産業連盟(CRIA)がまとめた2014年の中国国内における産業用ロボットの販売台数は、前年比55・7%増の5万7000台だった。中国経済には先行き不透明感が漂うが、人件費高騰、人手不足などを背景とした旺盛な自動化ニーズは継続している。高シェアを誇る日系、欧州系のロボットメーカーのほか、中国勢も大きく販売量を伸ばした。15年も30%以上成長する見通しと強気の姿勢を崩していない。

 上海市内で開かれた有力ロボットメーカー幹部による「CEO円卓会議」で、統計結果を公表した。中国系メーカーの販売台数は同77・1%増の1万7000台と大幅に拡大。CRIAの曲道奎理事長(藩陽新松機器人自動化総裁)は「中国ロボット産業の発展は非常に速い」としている。また、日系など海外メーカーの販売も同48・1%増の4万台と高い成長率を維持した。

 ただ、ロボットの主力ユーザー業界である自動車産業は、生産・販売とも減少に転じており、生産設備の過剰も指摘されている。ロボット需要の今後についても、注視する必要がありそうだ。

中国国際ロボット展、やはり日本メーカーが存在感。「自動車以外」の開拓課題


 世界最大級の産業用ロボット見本市「中国国際ロボット展示会(CiROS2015)」が8日、中国上海市の上海新国際博覧センターで開幕した。昨今ロボットの最大需要地とされる中国で、どれだけ自動化のメリットを訴求できるかがポイント。日系、欧州系、そして成長著しい中国系のロボットメーカーが、激しいアピール合戦を繰り広げる。ロボット単体のみならず、周辺機器などとともに、どれだけ優れたシステムが提案されるかも見どころだ。

 トップメーカーの一角として存在感を放つのが安川電機。7軸多関節ロボットを使ったアーク溶接のほか、バリ取りや工作機械へのワーク(加工対象物)供給など、さまざまな形式のデモを展示している。廣田博康安川電機(中国)ロボット事業統括部技術統括部長は「あらゆるアプリケーションを持つ当社の特徴を打ち出している」と出展内容を紹介。今回はロボットが龍の舞を披露するデモなど、中国向けに娯楽性も強調したブース構成で、来場者の注目を集めている。

 不二越は自動車業界向けの大型ロボットなどを展示。可搬質量210キログラム、同100キログラムの多関節ロボが車のサイドフレームを溶接するダイナミックなデモを設け、会場を沸かせている。いずれもケーブル内蔵型のロボットで、堀芳亮那智不二越(上海)貿易副総経理は「中国でもケーブル内蔵で省スペース化を図る動きが出てきている」と強調する。

 中国メーカーも負けてはいない。藩陽新松機器人自動化は多関節ロボットを用い、溶接、塗装、研磨などの自動化システムを紹介。また、食品の箱詰めなどを行う新パラレルリンク型ロボットも披露している。一方、広州数控設備は同8キログラムで高速・高剛性が売りの多関節ロボットを、新製品として同日に公開した。

 目立つのが従来以上に具体的な用途を想定したデモだ。中国では自動車以外の産業にロボットを普及拡大させることが課題。新たな分野を開拓するため、よりユーザー目線の提案が求められている。ダイヘンは主力のアーク溶接をはじめ7種類のデモを展示。西山佳伸OTC機電(上海)ロボット販売部統括課長は「自動化のイメージを分かりやすく提示し、見て感じていただくことが大事」としている。

 このほか、欧州からはスイスのストーブリが参加。2014年の総販売台数が5万7000台と最大需要地の中国市場で、世界各国のロボットメーカーが攻勢をかけている。
 
 活況を呈している中国のロボット産業だが、経済全体の減速に対する不安感も出ている。安川電機(中国)の西川清吾ロボット事業統括部董事事業部長は、「自動車業界をはじめ中国企業の業績は厳しくなりつつある」と懸念している。
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
藤崎記者の現地取材。5割増はほぼ想定通りの数字。今後、多少のデコボコはあるかもしれないが、中国のロボット市場は堅調に伸びていくだろう。そのうえで、日本のロボットメーカーは生産の現地化をどこまで進めるかが大きな課題。

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