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プロジェクションマッピングで作業指示―三菱電機、品質管理に新手法

熟練度浅い作業員支援
プロジェクションマッピングで作業指示―三菱電機、品質管理に新手法

電子基板上に矢印を投射して正しい差し込み位置を指示する

 三菱電機はビル用マルチエアコンなどを生産する冷熱システム製作所(和歌山市)で、立体物などに映像を投射するプロジェクションマッピングや画像認識技術を組み合わせた新しい品質管理手法を導入した。4月から多品種小ロット品約40機種を対象に、不良が発生しやすい要点作業で順次取り入れる。熟練度が浅い作業員が生産ラインに加わっても品質や生産性を維持するための支援ツールとする狙い。

 三菱電機が導入する新しい品質管理手法は、プロジェクターと画像認識用カメラを組み合わせた装置を使い、エアコン室外機に組み込む電子基板上のコネクター位置に矢印映像を投射し、正しい差し込み口を指示する。
 配線作業は音声で「動力線を左から赤、白、黒と入れてください」といった指示を流すほか、取り付け後の線の色をカメラで認識して正解画像と比べ、取り付け状態が正しいか判定する。

 冷熱システム製作所は業務用空調機器を台車の上で生産する「台車生産方式」を採用している。同製作所の11の組み立てラインのうち、10ラインが同方式を採用しており、5月には全ラインが同方式になる予定だ。
 従来は台車近くのモニターで作業を指示する「台車ナビ」を取り入れていた。今回は台車ナビを進化させ、モニターを見なくても正しい作業ができる仕組みを作った。

(日刊工業新聞2015年04月06日 電機・電子部品・情報・通信面)



【改善エコプロセス/三菱電機・冷熱システム製作所−作業しやすい姿勢で効率化】

 業務用空調システムなどを製造する三菱電機の冷熱システム製作所(和歌山市)。産業用冷熱機器を含めて約1万機種を製造する典型的な多品種変量生産の工場だ。電力消費の大きいベルトコンベヤーラインから「台車生産方式」に移行し、省エネルギーと生産性向上を両立した。三菱電機が推進する「エコファクトリー」の象徴ともいえる同工場には国内でのモノづくりの維持、強化に向けたヒントが数多くある。

 文字通り「台車」の上で空調機器を製造する台車生産方式。セル生産をベースとする独自ラインだ。導入前に比べて生産時の二酸化炭素(CO2)排出量、製造リードタイムを半減した。70―80メートルを必要とするコンベヤーラインは生産機種変更による部品の入れ替え、人員配置変更によるロスが多く、生産量変動に対する柔軟性が低かった。
 回転機構を設けた台車を使い、固定されたワークを作業者が最もやりやすい姿勢で組み立てる。当初はタクト管理が容易なコンベヤー式に比べて生産性が落ちる懸念はあったが、むしろ「品質確認や作業スピードが向上した」(山根靖正冷熱システム製作所製造管理部長)。2006年の導入以来、6ラインに採用しており、今期中に1ラインを追加する予定だ。

 この生産方式を補完するのが「台車ナビシステム」だ。熟練作業者の組み立て手順を3D(立体映像)でパソコン画面上に表示する。ネジ締めなど指示通りの作業が行われないと次工程には進めず、「熟練工でなくても、確実に作業できる」(同)。「台車生産、ナビ」を導入したタイ工場では生産ラインの素人率が90%以上にのぼるが、導入1年半で市場での不良はゼロを継続中だ。

 また、工場のエネルギー使用量を可視化した。「生産していない時間帯のエネルギー使用を無くす」(武田安史冷熱システム製作所製造管理部環境保全課長)のが目的だが、このデータを基に「生産時のピーク電力を下げるための改善が進んでいる」(同)。効果が高かったのが金型の軽量化。樹脂成形ラインの中で動かす重さ5―6トンの金型を200キログラム軽量化すると「モーター電力が4%下がる」(同)効果があったという。

 また、分流コントローラー増産に伴い電磁弁ブロックロウ付けの電気炉負荷が急増したため、電気炉を夜勤から日勤の作業のない時間帯に電源オフしたり、ロウ付け治具の軽量化による熱容量軽減などに取り組み、生産性を2割上げ、CO2を年8トン削減した。
 工場全体の省エネ対策としては、すでに自家発電など一般的な節電対応を終えている。今年度からはヒートポンプの導入を進め、7―8台を設置する見通しだ。また、建屋への太陽光発電システムの搭載を加速しており、7月中旬までに810キロワットに達する予定だ。

 09―11年度の3カ年でおよそ1500トンのCO2を削減。12年度も源単位で4%の改善、CO2で500トン強の削減を見込む。同工場の省エネ対策をコピーしているタイ工場が昨年、環境に優しい企業への「タイランド・エナジー・アワード2010」をタイ首相から贈られた。冷熱システム製作所は今後もタイ、中国のマザー工場としての役割を担っていく。
 
 【新工程のポイント】 
 (1)多品種変量生産に対応する台車生産方式採用
 (2)電力使用の可視化で節電と生産性向上
 (3)ヒートポンプや太陽光発電など省エネ推進
日刊工業新聞2012年06月20日 モノづくり面
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
はやりのプロジェクションマッピング、工場にも進出。 以前こちらの工場を取材したことがあります。たくさんの取組みを積極的に行っている素晴らしい工場なのを知っていただきたく、関連記事を後半に掲載しました。 元気な現場はどんどん新しいことを取り入れるなあと感心します。

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