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太陽光発電メーカー、住宅の「自家消費」製品に活路見いだす

余剰電力の買い取り期間終了で売電メリット低下へ
太陽光発電メーカー、住宅の「自家消費」製品に活路見いだす

京セラが展開する太陽光パネル、家庭用蓄電池、固体酸化型燃料電池などの製品群

 関西の電機メーカー各社が、太陽光から住宅用に生み出す電力の「自家消費」に、新たな商機を見いだしている。これまで国内の太陽光市場は、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)が下支えしてきた。だが買い取り価格の下落が続くほか、2019年末には余剰電力の買い取り期間が段階的に終了し始め、売電するメリットは低下している。こうした状況から、太陽光発電を自家消費するための製品ニーズが高まる。各社の動向を探った。

 太陽光発電を自家消費するには、使わない電力をためておく蓄電池の導入が有効だ。太陽光発電システムは、発電した直流(DC)の電力を交流(AC)に変換するパワーコンディショナー(電力調整装置)を使用する。

 だが、このシステムに蓄電池を追加して組み合わせるには、既設のパワコンを丸ごと取り換える必要がある。そうした手間やコストが、自家消費に不可欠な蓄電池の導入に二の足を踏む要因の一つとなっている。

 「創蓄連携システムRタイプ」のパワーコンディショナー(上)と、後から追加で接続可能な充放電コンバーター(下)(パナソニック)

 そこでパナソニックは「創蓄連携システムRタイプ」を発売。太陽光発電システムを導入した後に、充放電コンバーターと呼ばれる電力を変換する機器を接続すれば、蓄電池を追加設置できるようにした。既設のパワコンを取り換える必要はない。利用者の負担を減らし、蓄電池の導入を促す狙いだ。

 だが課題もある。電力を変換する機器を複数経由すると、電力変換によって起こる損失が増える。そこで各社は近年、パワコンと蓄電池を一体化し電力変換損失を減らす製品を相次ぎ投入している。

 その一つとして、村田製作所は「All―in―One蓄電システム」を18年中に量産する。電力変換損失を減らすだけでなく、安全性も高められる。安全技術の中核は、オリビン型リン酸鉄という素材を採用したリチウムイオン二次電池。電池が高温の環境に置かれ、一定の温度を超えると急激に発熱する「熱暴走」が起きにくく、寿命は最長15年と長期間使用できる。

 17年に買収を完了したソニーの電池事業が、具体的に動きだした成果の一つ。村田製作所の村田恒夫会長兼社長は「長寿命とハイパワーを生かせる市場向けに開拓する」と力を込める。

EV直接充電


 またニチコンは、太陽光発電と蓄電池だけでなく、自動車に蓄えた電気を住宅に使うビークル・ツー・ホーム(V2H)スタンドと連携できる「トライブリッド蓄電システム」を、6月に発売する。三つの機器をつなぎ、電力損失の少ないDCにより一括して管理できる。太陽光発電の電力を電気自動車(EV)に直接充電でき、家庭の電気代の削減も見込める。自家消費ニーズとEV化の潮流を、同時に取り込もうとしている。

 太陽光発電の最大のデメリットは、天候や日照時間などの変化によって発電量が大きく左右されることだ。そのため太陽光発電をうまく使うには、蓄電池の充放電をいかに制御できるがが重要な要素となる。
パワーコンディショナー(上)と充放電コンバーター(下)(パナソニック)

 シャープは、クラウドサーバーと連携して充放電を自動制御する「クラウド蓄電池システム」を展開している。天気予報や電力使用状況の変化を分析し、電力の使用を効率化する。17年に家庭用エネルギー管理システム(HMES)のコントローラーを刷新。これによりスマートフォンを使い、電力の利用状況などを遠隔地から手軽に確認できるようにした。暴風雨といった気象警報の発令を受け電動窓シャッターを自動的に閉じるなど、家族の安心・安全につながるサービスを組み合わせ差別化する。

 京セラはHEMSに人工知能(AI)を使う。余剰電力量を試算し、蓄電池の充放電やヒートポンプ給湯器「エコキュート」の湯沸かし機能などを制御する。京セラの谷本秀夫社長は「AIを活用すれば、発電量データを基に(エネルギーの)再分配を計算できる」と期待し、研究を加速している。

 また京セラは現在、太陽光発電だけでは不足する電力を、固体酸化型燃料電池(SOFC)を使い補完するシステムの研究開発を進める。蓄電池についても大容量、長寿命化の研究を続けており、18年中にも実証実験を始める予定だ。

 太陽光発電システムの各機器に搭載する部品は、一層高い性能が要求される。特に電力変換損失をいかに低減するかが、製品開発の大きなポイントだ。そのため現在主力のシリコン半導体より、電力変換効率が高い炭化ケイ素(SiC)半導体を使ったパワーデバイスに期待が高まる。

 ロームは、SiC製のショットキーバリアーダイオード(SBD)や金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)のメーカーとして、世界第3位のシェアを占める。今後のエネルギー市場の拡大を見通し、子会社のローム・アポロ(福岡県広川町)の筑後工場(同筑後市)に、新棟の建設を決めた。20年までに同拠点の生産能力を2倍に高める。

 一方、大規模太陽光発電所(メガソーラー)は運用コストを低減するため、多数の太陽電池パネルを直列に接続して、効率良く電気を取り出せるよう高電圧化する動きが進む。三社電機製作所はその市場を狙い、最大1500ボルトの電圧に対応する逆流防止ダイオードを開発した。電流の逆流を抑えて、太陽電池パネルを保護する装置だ。18年秋に受注を開始する。
国内でも需要拡大が見込める逆流防止ダイオード(三社電機製作所)
日刊工業新聞2018年5月1日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
太陽光発電システムは、国内向けの太陽電池パネル販売が苦戦している。ただ今後も、エネルギーシステムとして重要な位置を占めることは変わらない。さらなる効率化を目指し、各社とも研究開発に余念がない。 (日刊工業新聞社大阪支社・園尾雅之)

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