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「感性のカネボウと理性の花王を化学反応させたい」(カネボウ社長)

村上由泰社長インタビュー
「感性のカネボウと理性の花王を化学反応させたい」(カネボウ社長)

村上由泰社長

 カネボウ化粧品が2006年に花王の傘下に入って12年が経過した。カネボウ化粧品と花王それぞれの強みを融合するとともに、ブランド価値を伝えるための“尖った”ブランド作りを強化する。1月に就任した花王出身の村上由泰社長に今後の戦略や方針を聞いた。

 ―好調な化粧品業界全体の流れに乗り切れていないという課題にどう対応しますか。
 「高価格帯のハイプレステージブランドの育成とブランド・ポートフォリオ戦略を強化する。ブランドのメリハリや優先順位などポートフォリオがはっきりしていない。強化すべきブランドを明確にしてしっかり投資する。投資については相当メリハリをつける。グローバル視点で伸ばすものは徹底的に伸ばす」

 「現状分析として、化粧品の二極化といった環境の変化に対応できていない。日本の化粧品はもともと三極構造といわれていたが、今は中価格帯が上と下に振れている状態だ。中価格帯に強いビジネスモデルでそこに依存した状態が続いた」

 ―2割の海外売上比率をどのように上げていきますか。
 「海外は欧州と、中国を中心にしたアジアに注力する。欧州で販売する高価格帯ブランドのセンサイについては、商品ラインの追加などテコ入れを考えている。中国については将来的にはプレステージブランドを販売していきたい」

 ―ブランド価値を伝えるための“尖った”ブランド作りとは何ですか。
 「ブランドの価値を伝える前に、ブランドに個性を持たせて世界観を明確にする必要がある。数あるブランドの中から磨き上げるブランドを選び、徹底的に魅力あるものへ仕上げていきたい」

 ―カネボウ化粧品と花王の良い部分をどのように融合していきますか。
 「カネボウ化粧品が花王グループに入った当初は、感性のカネボウ・理性の花王と分けてきたが、今はそれを見直している。せっかく二つあるものを分けるのではなく、うまく化学反応させていきたい。顧客との接点は一つ一つのブランドにある。ブランドと顧客の接点を強化する」

 「カネボウ化粧品は“五感で感じる”モノづくりにこだわりを持つ。花王はエビデンスにこだわったモノづくりを進めてきた。理性と感性それぞれの強みを生かして魅力的な化粧品に仕上げることが大切だ」
(聞き手=高島里沙)
日刊工業新聞2018年4月27日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
化粧品業界は、インバウンド(訪日外国人)需要に加え、国内においても高価格帯化粧品の販売が好調だ。業界全体の良い流れに乗れていないと分析する村上社長。中国とマレーシアに駐在経験があり、今後海外事業についてもスピード感を持って取り組む。環境変化に追いつくための対応が求められる。 (日刊工業新聞社・高島里沙)

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