再生エネの調達環境を変える「非化石証書」とは?

みずほ情報総研の中村悠一郞コンサルタントが解説

 日本では再生可能エネルギーで作った電気は高コストで、購入しづらい。こうした課題を解決し、再生エネの調達環境を変えそうな制度が2018年度に始まる。経済産業省が創設する「非化石価値取引市場」だ。企業は市場で売り出される「非化石証書」を購入することで、再生エネを調達できるようになる。制度に詳しいみずほ情報総研の中村悠一郎コンサルタントに非化石証書を解説してもらう。  Q 非化石証書とは。  A 再生可能エネルギー(再エネ)発電や原子力発電に由来する電力が持つ、非化石価値(温室効果ガス排出がゼロの価値など)を電力から切り離し、取引可能にしたもの。5月をめどに固定価格買い取り制度(FIT)の認定を受けた再エネ発電設備由来の電力(FIT電力)を対象として、非化石証書の取引が始まる。非化石証書を利用すると、排出ゼロの電力を購入したことなどを主張できる。  Q なぜ非化石価値取引市場が創設されたのでしょうか。  A 主な理由は二つ。一つ目が、小売電気事業者における非化石電源の調達環境の改善。二つ目が、増大する国民のFIT賦課金負担の軽減。現状、FIT電力が持つ非化石価値は電力市場で取引できず、小売電気事業者は入手しにくい。このため、非化石価値のみ証書化して切り出し、調達しやすくすることが狙い。また、小売電気事業者が非化石証書の購入に支払った費用を賦課金の原資とし、国民一人ひとりの賦課金負担の軽減につなげる。  Q 誰が非化石証書を購入できますか。  A 小売電気事業者のみであり、メーカーなど電力の需要家は購入できない。需要家は、小売電気事業者が非化石証書を使って設計した電力メニューを購入することで、間接的に非化石価値を購入できる。  Q 小売電気事業者、需要家のメリットは。  A 小売電気事業者にとっては非化石電源比率が向上することに加え、再エネや低炭素を付加価値とする電力メニューを設計しやすくなり、商品・サービスの幅を広げられる。需要家にとっても再エネ・低炭素な電力メニューの選択肢が増えるので、温室効果ガスの排出削減や再生エネ調達を戦略的にできるようになる。また電力メニューの購入の場合、初期費用がかからず、安定的な価格・量での再生エネ調達が実現できる利点もある。  Q 排出ゼロの価値などを取引できるJ―クレジット(再エネ発電由来)やグリーン電力証書と非化石証書との違いは。  A J―クレジット(同)とグリーン電力証書は原則として自家消費した再エネ電力が対象。2018年度に始まる非化石証書は電力系統に流れたFIT電力が対象となる。それぞれに供給ポテンシャルや価格帯、利用可能な用途などに少しずつ違いが存在する。目的に応じて使い分けることがポイントとなる。  Q 再エネは高コストと言われていますが、非化石証書を使った電力メニューも高くなりますか。  A 実際に再エネ設備を導入する費用と比べると、非化石証書そのものは廉価に取引される見込み。また17年度から、小売電気事業者は電力メニューを自由に設計できるようになった。ルール上、非化石証書と電力の組み合わせに制約はなく、いろいろな方法で“実質”再エネ電力メニューを設計できる。設計次第では非化石証書を使っても、系統電力と大きく異ならない価格の電力メニューができるのではないか。  Q 電力メニューを発売する小売電気事業者はいますか。  A 国に電力メニューとして報告しているのは、17年度時点で2社4種類のみ。しかし、一部の新電力は非化石証書を使った電力メニューの販売を公表しており、少しずつ増えてくるだろう。非化石価値を利用したい需要家は、電力会社に電力メニューを設計するように交渉することも手だ。  Q 太陽光や風力といった再エネの種類、発電所は指定できますか。  A 非化石証書は再エネの種類、発電所の立地といった情報を持たないため、指定して購入できない。J―クレジット(同)、グリーン電力証書は指定できる。種類、立地などを重視する需要家やNGOもいるため、非化石証書にもこれらの情報を付加すべきだという意見がある。発電事業者と協力し、非化石証書とは別に電源情報などを保証する仕組みを構築する方法も考えられる。  Q CDP気候変動質問書への報告で、非化石証書を利用できますか。  A CDPジャパンから発表があり、電力の需要家は非化石証書を使った“実質”再エネ電力メニューを小売電気事業者から購入することで「温室効果ガス排出ゼロ」や「再エネ電力を利用」などを報告できるようになった。取り組みを世界にアピールしたい企業には大きな進歩となる。  Q SBT、RE100はどうですか。  A 現時点で、それぞれの運営団体から正式な発表はない。私見だが、SBTは「GHGプロトコル」というルールに合致した手法での目標達成を求めている。非化石証書はそのルールに合致していると認められたため、論理的にはSBTの目標達成に利用できるだろう。一方、RE100のルールは厳しく、非化石証書はそのルールを満たせない可能性がある。  Q 非化石証書の利用で注意点は。  A 二つの留意点がある。一つ目は、温室効果ガス排出量の算定ルールが、国内とCDPなどの国際的な団体では異なる点である。海外にもアピールしたい企業は、グローバルなルールに従うことが望ましい。二つ目は、非化石証書と組合わせる電力についてCDPジャパンから推奨事項が提示されている点。非化石価値を持たないFIT(固定価格買い取り制度)電力か、排出係数の低い電力を優先的に組合わせることを推奨している。  Q 非化石証書以外に再エネ電力を購入する手段はありますか。  A 日本では一部、採用できないが、RE100が定めている購入手法に関わる表が参考となる。それぞれ価格や規模、見栄えなどで違いがある。  Q 今後の展望は。  A 2019年度から原子力や既存の大型水力などの非化石価値を証書化する、いわば非化石証書の“第2弾”が取引される予定。制度設計はこれからだが、詳細な電源情報を含めるかどうかなど検討事項は多い。“第2弾”がCDPなどで報告できるかについても注視が必要である。

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