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「超人手不足」時代、新人離職率を減らす傾向と対策

小さい企業ほど離職率が高い。誠実に労働条件の開示を
 新入社員を迎える企業も多いこの時期、若い世代の早期離職の状況について考えてみたい。厚生労働省の調査によると、新規学卒就職者の3年以内の離職率は、大学卒32・2%、高校卒40・8%、中学卒67・7%となっている(2014年3月卒業者の状況)。企業規模が小さいほど離職率が高くなる傾向があり、従業員30人未満の企業では大卒でも半分が3年以内に離職しているという状況である。

 なぜ若い世代は離職してしまうのだろうか。これをひもとくには、16年に行われた「若年者の能力開発と職場への定着に関する調査」(労働政策研究・研修機構)がヒントになる。

 同調査において、新卒3年以内の離職者に対し、初めて正社員として勤務した会社等を離職した理由について尋ねている。「肉体的・精神的に健康を損ねたため」(男性29・9%、女性34・3%)や「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかったため」(男性34・0%、女性33・2%)といった理由が目立つ。

 さらに、同調査で離職者は「入社前に聞いていた労働条件と現実とが異なっていた」「残業代の不払い・人手不足で業務が立ちゆかない・希望した日に有給休暇が取れない等の職場トラブルを経験した」「採用後3カ月間に指示が曖昧なまま放置され、何をしたらよいか分からなかったり、先輩社員と同等の業務を初めから任せられたりした」人が多いことが判明している。

 もちろん企業側にも言い分はあろうが、企業への信頼を損ねたまま、さしたるトレーニングもなく業務を任せられ、しかも長時間労働を強いられたとしたら、心身ともに疲弊してしまっても不思議はない。

 実は、新卒就職者の3年以内離職率は、バブル崩壊直後や08年秋のリーマン・ショック直後を除けば大きな変動はない。つまり、今に始まったことではないのだ。

 ただ、従来と違うのは、人材獲得競争は激化の一途をたどっているという現実である。定着に向け、最低限、普段から悩みを相談できるような雰囲気づくりや、段階を踏んだ教育の実施といった策を講じたい。

 また、労働条件の改善はすぐには難しくても、当初より企業側から誠実に労働条件を開示しておけば、不幸なミスマッチは防げるであろう。

 なお、中途採用を中心としている企業においても、同様の取り組みが求められよう。
(文=高橋美紀・中小企業診断士)
日刊工業新聞2018年4月17日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
最近、超大手企業に勤める30前後の優秀な人から転職を相談されることがよくある。特に女性が多い。新卒の離職減らしも重要だが、せっかく6~7年のキャリアを積んで辞められるのは、企業にとって痛い、必ずしもその理由がキャリアステップや年収が主ばかりではない。管理職側の人材・能力マネジメントに正解はないのだが…。

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