クラウドは〝地上戦"へ、日本企業の勝ち筋は?

「エッジコンピューティング」に焦点

エッジコンピューティングに焦点が当たっている

 米グーグルや米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)などの巨大プラットフォーマーによる覇権争いが新局面を迎えている。企業の情報システムをデータもろとも“雲(クラウド)”の上に吸い上げる空中戦ではAWSが抜きんでたが、戦いは雲の上にとどまらない。IoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)が産業界に新風を吹き込む中で、戦いの場は端末などのエッジを含めた地上戦へと広がり、「エッジコンピューティング」に焦点が当たっている。  デル(川崎市幸区)とEMCジャパン(東京都渋谷区)は3月に開いた2018年度の方針説明会で、クラウドとエッジを結ぶ中間層として、「分散型コア」と呼ぶ新しいアーキテクチャー(設計概念)を打ち出した。  分散型コアはサーバーや外部記憶装置などのハードウエアを仮想化してソフトウエアで制御する「ソフトウエア・デファインド」技術がベースとなる。平手智行デル社長は「分散型コアを通じて、すべてを論理的に一つのクラウドとして扱う」と、その意義を強調。情報システムを「自前で持つ、持たない」という従来型のクラウド論議から一線を画し、IoT時代に向けて新たな地平を目指す方針を示した。  クラウドとエッジの中間層でのデータ処理については、IoT接続された端末近くにゲートウエーなどのネットワーク装置を置く「フォグ(霧)コンピューティング」という考え方があり、米シスコ・システムズなどが提唱している。  クラウドコンピューティングはIT活用のあり方を一変させたが、応答速度などで限界が生じる。例えば、ロボットの操作や自動運転、仮想現実(VR)などの画像処理ではミリ秒単位の応答速度が求められるが、クラウドに戻して処理すると、間に合わない。  こうした場合に、ネットワーク上の端末に近い中間に“フォグ層”を配置すれば端末や設備から生じるデータを現場で適時処理できる。フォグは用途に応じて、クラウドと連携しながら役割分担する。  AWSが新規投入した「グリーングラス」と呼ぶソフトウエアも、クラウドとの役割分担が妙味。クラウドに接続しなくてもオフラインで利用でき、クラウドに接続した時に効率良くデータをやりとりし、現場でのリアルタイムな判断はエッジ側に任せるといった使い方が一般的だ。  フォグやエッジという言葉に明確な定義はないが役割や機能によって使い分けることが多い。旬のテーマであるAIなどと組み合わせることで、さまざまなサービスやアプリケーション(応用ソフト)の実装が可能となる。  製造業での先駆例はファナックやシスコなど4社が主導するIoT共同開発プラットフォーム「フィールド・システム」。このシステムは中間層であるフォグにアプリ開発用のプラットフォームを置き、分散協調型の機械学習によって、機械同士のリアルタイム連携を実現する。  これとは別に三菱電機や日本IBM、NECなど6社は工場用IoT基盤「エッジクロス」の構築に向けたコンソーシアムを立ち上げ2月に一般社団法人化した。これを機に幹事会社に日立製作所も加わり、先導役は7社となった。エッジクロスが目指すのはメーカーを問わず、工場内のあらゆる機器をつなぎデータを一元管理して活用するIoT基盤。エッジコンピューティングを中核に据える。  工場向けのみならず、産業界全体で巻き起こるのは、集中型のクラウド技術と、フォグやエッジなどの分散型コンピューティングが混在したハイブリッド化の新潮流だ。現状は混戦模様だが、その先には既存のエンタープライズITを超えた新しい世界が拓けている。

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