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高い建設コストがネックの水素ステーション。材料メーカーも知恵絞る

新日鉄住金が高強度ステンレス鋼の使用量4割少なく。配管時の肉厚を約半分に
高い建設コストがネックの水素ステーション。材料メーカーも知恵絞る

「HRX19」(左)は配管の肉厚をSUS316Lの半分まで薄くできる

 新日鉄住金は水素ステーション向け高強度ステンレス鋼のコストダウンを急ぐ。競合品に対する競争優位を確保すると同時に、水素ステーションの建設費や操業費用の低減に貢献するのが狙い。サイズ・仕様の集約や量産効果などで、競合するステンレス「SUS316L」との値差を現在の2―3倍から、当面1・5―2倍に縮める。また、2015年度中には溶接による施工を可能にし、工費の低減につなげる。
 
 70メガパスカル以上の高圧水素に対応できるステンレス鋼「HRX19」は、主に水素ステーションでの圧縮機から蓄圧器、ディスペンサーまでの配管に使われる。強度はSUS316Lの約2倍で、耐水素脆性にも優れる。このため、配管に加工する場合、肉厚をSUS316Lの約半分にでき、重さでは4割軽くできる。水素ステーションに使う際も重量比で4割少なくできるため、「トータルコストではSUS316Lと同等かそれ以下にできる」(鋼管事業部特殊管営業部プラント鋼管室)としている。

 現在は水素ステーション内の機器の仕様が統一されておらず、「各社の指定にすべて応じてつくるようにしているので、サイズも多く、肉厚も何通りもある」(同)のが現状。サイズを集約し、ロットをまとめることで、さらにコストを下げられるとしている。

 加えて、溶接による接合が可能になれば、現在のねじ切りと継ぎ手による接合よりも工期が短くなり、工費も下げられる見通し。それには水素ステーションの設計・施工会社が高圧ガス保安協会の認可を得る必要があるが、「認可を得るため、当社も万全の支援を行う」(同)ことで、本年度内にも溶接による施工が可能になると期待している。

 さらに、継ぎ手の場合は定期点検時にすべて取り外して安全性を確認する必要があるなど、メンテナンス作業が膨大。溶接ではそうした手間が省けるため、操業費用の低減にも貢献できる。
日刊工業新聞2015年07月03日 素材・ヘルスケア・環境面
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
 なかなか予定通りに整備が進んでいない水素ステーション。素材メーカーの地道な取り組みがステーション建設のスピードアップに追い風となる?

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