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今年度のIPOは85件。フィンテック・AI、従来にない新業態も

21年以降は人手不足が影響する可能性
今年度のIPOは85件。フィンテック・AI、従来にない新業態も

フィンテックを代表するマネーフォワードは昨年9月に上場した 

 東京証券取引所など全国の証券取引所における2017年度のIPO(新規株式公開)件数は85件となった。前年度比では6件減少したが、比較的高い水準を維持。例年に比べて大型上場の少ない一年だったが、フィンテック(金融とITの融合)や人工知能(AI)などテクノロジー関連の企業が上場するなど、新たな業態の上場が見られた。

 プロ投資家向けの「東京プロマーケット市場」を除くと実質的な件数は78件。2月以降の株式市場は不安定だが、それ以前まで比較的好調な市況が続いたこともあり企業側の上場意欲は好調だった。

 証券会社の主幹事獲得件数でみると、野村証券が20件で首位。動画投稿サイト「ユーチューブ」で収入を稼ぐクリエイターのマネジメント業務を展開する「UUUM」のIPOを担うなど、従来にない新業態の上場を支援したことが特徴だ。

 SMBC日興証券は15件ながら、家計用アプリケーションで知られるマネーフォワードやAIベンチャーのパークシャテクノロジーの主幹事を獲得した。テクノロジー銘柄を手がけた実績もあり、「AIやフィンテック関連でのIPOの引き合いが増えてきた」(桑内孝志第一企業法人部長)という。

 大和証券は13件。ただ時価総額約6000億円と17年度の大型IPOだったSGホールディングスの主幹事を獲得し、金額ベースでは2位だった。同社は08年のリーマン・ショック以降、一時的にIPO事業を縮小したが、近年再強化したことが奏功した。

 18年度も、各社が抱える上場予備軍をみるとIPOは比較的高い水準が期待できる。ただ証券会社や監査を担う監査法人の一部には拡大するIPOに対し、人員不足が徐々に顕在化。特に監査法人では事業を縮小する動きも出ている。このため「21年以降、こうした人手不足がIPOに影響する可能性がある」(関係者)といった先行きを懸念する声もある。
(文=杉浦武士)
日刊工業新聞2017年3月30日
安東泰志
安東泰志 Ando Yasushi ニューホライズンキャピタル 会長
上場準備は、内部統制を強化し、成長インセンティブを持つことに繋がるが、上場にはメリットとデメリットの両方ある。特に、余りに小さな規模の上場は、自らを縛る一方で資金調達にも貢献しない可能性がある。数を競うより、質を上げたい。

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