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もう元LINEと呼ばせない。森川氏「C Channel」で人生最後の挑戦

「新商品はばかな人から生まれる。真逆のことをやらないと新しい産業は生まれない」(森川CEO)
もう元LINEと呼ばせない。森川氏「C Channel」で人生最後の挑戦

配信されているC Channelの動画サイト

 日本を財政面から倒産寸前の「圧倒的につぶれそうな会社」だと評す森川亮。LINEでは社長として事業を軌道に乗せ、時代の寵児(ちょうじ)となる。その先で何をしたいかを考えた時、「死ぬ前に日本を元気にしたい、貢献したい、日本が元気になるメディア事業をやるべきだ」との思いが巡った。今回の起業が人生最後の挑戦だ。

 【若者に焦点】
 筑波大学卒業後、日本テレビ放送網、ソニー、LINEと渡り歩いた森川は、日本で若者向けのメディアが少ないことを危惧する。高齢化が進み、視聴率を獲得するためにはターゲットの年齢を上げていくしかない。若者を対象にした番組がなくなるだけではなく「“最近の若者は”といった若者批判が増える。若者が共感できず、もともと自信のない若者がさらに自信を失ってしまう」と嘆く。

 若者に焦点を当てたのは「真逆にチャンスがある」という逆転の発想からだ。昨今の「ビッグデータ分析は数値主義のマイナス点。進めば進むほど最後は誰もいなくなる構図だ」とばっさり斬る。「新商品はばかな人から生まれる。真逆のことをやらないと新しい産業は生まれない」と森川は言う。

 【横から縦に】
 そこで新しいものを素直に受け入れやすい若い女性に焦点を当て、動画ファッションマガジンを配信する「C Channel」という会社を設立した。ファッションやヘアメーク、グルメ、旅行などにジャンル分けし、動画を配信する。

 これまで映像には映画館に見に行く時代があり、テレビの登場で“受け取る”時代になった。「これからはキャッチボールの時代だ」と森川。社名のCはコミュニケーションの頭文字からとった。
 
 従来の動画は横向きが主流だ。同社はスマートフォンの向きを変えずに見られる縦向きの動画を配信する。「モバイル向けインターネット動画が一番進んでいるので、今後は横から縦になるだろう」と推測する。

 【利益度外視】
 今の夢は「米タイム・ワーナーのようなグローバルメディア企業に成長させることだ」と語る。売り上げ目標はなく利益追求は考えていない。何が良いかを見定める時期だ。

 目下の悩みは「ただでさえお金を使わない若者がよりシビアになった」ことだ。動画はパケット通信料金がかさむ。当初は1分で配信していたが「40秒でがくっと下がる。トータルで見る時間を相当気にしている」と言う。

 スマホで動画を見ることにこだわりたい森川は「スマホならではの動画を作らなければいけない。動画界の力道山を探そう」と試行錯誤する。かつて人々を熱狂させたような圧倒的なキラーコンテンツならば、料金は気にならない。森川はそう信じている。
 (敬称略、文=高島里沙)
 
 【企業プロフィル】
 ▽代表=森川亮氏▽住所=東京都渋谷区▽資本金=2億7400万円
日刊工業新聞2015年07月06日 中小・ベンチャー・中小政策「日本の未来企業―次の100年を創る」より
山口豪志
山口豪志 Yamaguchi Goushi Protostar Hong Kong 董事長
森川さんの挑戦。引用のキーワードがタイムワーナーであり、力道山であり・・・と古今東西、滝に渡るのが興味深い。新しい若者のためのメディアを創る。実に壮大なテーマだけに一筋縄ではいかないだろうし、時間もかかるだろう。ただ、きっとやり抜かれるであろうから、大変に楽しみである。これからの動向にも引き続き、注目したい。

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