鯖江から“メガネのトヨタ”目指す

オーマイグラス、グローバル・メガベンチャーへ一歩一歩

鯖江市の工場では熟練工がモノづくりに取り組む

 オーマイグラス(東京都港区、清川忠康社長)は、福井県鯖江市で生産している眼鏡を主力ブランドとして販売する。海外市場にも投入しており、海外売上高比率を2021年6月期に、16年6月期比30ポイント増の50%にすることを目指す。ITを駆使することで、高品質な商品を低価格で販売していることがポイントで、同市の眼鏡産業を活性化する狙いもある。  福井県鯖江市は、世界を代表する眼鏡の生産地。眼鏡フレームで、日本の約90%、世界の約20%が同市で生産されている。その「めがねのまちさばえ」だが、東南アジア製の低価格製品の台頭により、地元の各社は苦戦している。  だが、世界に誇れる技術は残っている。これに着目したのが、清川社長だ。現在、オーマイグラスは、同市の眼鏡メーカー約10社を協力工場とし、生産を委託している。いずれもオーマイグラスの品質・管理など厳しい基準をクリアした実力のある企業だ。この協力工場では熟練工がモノづくりに取り組む。  協力工場の型を生かしながら、トレンドに合わせてアレンジしている。さらに蓄積してきたビッグデータ(大量データ)などから分析した今後の流行など情報を共有するほか、部品の共通化や金型の共有により、コストダウンをサポートする。  同社は全国に8店舗の直営店を展開しているが、実店舗での取り扱いを200―300点の売れ筋商品に絞り、それ以外はインターネット販売でカバーしている。これにより在庫の圧縮と小規模な店舗運営を可能にし、固定費の抑制を実現している。  ただ、実店舗はアフターサポートの拠点になるほか、ネットで商品を取り寄せて試着できるサービスも行っている。利便性向上のため、年間に数店舗のペースで出店を進める。将来は全国の主要都市をカバーする計画だ。  こうした取り組みで、平均価格帯を1万5000―2万円(消費税抜き)と、同業他社の同様な品質の商品と比べ半額以下にすることを可能にしている。清川社長は「時間のかかる地味な仕事だが、結果は出始めている」と手応えを感じる。  この“メイド・イン・鯖江”の眼鏡が、同社の主力ブランド「オーマイグラス東京」で、「特に海外で反響が大きい」と清川社長。同社は香港や台湾、韓国など東南アジアを中心に海外展開を進める。17年11月にはオランダに投入、これを足掛かりに欧州全域をカバーしていく。  同社の海外展開は、鯖江市でつくられた眼鏡の販路がグローバルに広がることも意味する。清川社長は「鯖江市の眼鏡メーカーは世界一になれるモノづくりをしている。インターネットや若い力でサポートしていきたい」と産地との連携に積極的だ。  今後は協力工場の事業承継といった経営面の支援も検討するなど、同市の眼鏡産業復活にも尽力する。 (文=千葉・中沖泰雄) 日刊工業新聞2018年3月21日  新たな時代のトヨタ自動車をつくりたい―。国内最大級のメガネ通販サイトを手がけるオーマイグラス(東京都品川区)社長の清川忠康の表情は真面目そのもの。2050年以降の日本のモノづくり産業を見据えて導き出した答えだ。躍進する新興国に価格競争では太刀打ちできず、手を打たなければ日本衰退の危機となる。モノづくり再興や地方活性化など、中長期的な難題は山積みだ。32歳の若手経営者は、未来に向けて日本人の誇りを結集した「日の丸企業」を育てる夢を抱く。  「度付きを売ることがイノベーションだ。雑貨を売るなら他のネット通販で済む」。差別化ポイントは明確だった。眼科で処方せんをもらう障害を解決するため、視力測定などを行う出張サービスを行っている。返品・送料無料など、利用者の不安を解消する仕組みも導入した。  「50年、60年後になると今の仕事の大半がなくなる。その視点で新たな仕事をつくっていくことが必要だ」。清川は08年に入社した経営共創基盤(同千代田区)で流通・小売り業などの事業再生に携わりながらそう考えていた。  起業への関心が強まり、1年半後に米国のスタンフォード大学大学院へ留学。独りで本場へ飛び込む行動力は昔からだ。清川少年は中学校まで出身地の大阪で暮らしていた。  ただ、「世の中で起きることは大体、東京で起きる。東京をこの目で見ないと世の中で何が起きているか分からない」と上京を思い立つ。慶応義塾大学の付属高校に入学した。  時は過ぎ、“アラサー”の清川はシリコンバレーの空気を存分に吸い、「トヨタみたいな日の丸企業を未来に向けてつくっていきたい」と決意を固めた。帰国後の11年7月にミスタータディ(現オーマイグラス)を立ち上げた。  メガネを選んだ理由について、「そんなに深いアイデアはなかった」と清川。ただ、彼の経歴を見れば必然の選択に思える。  世界3大メガネ産地の一つと言われ、国産フレームの9割以上を手がけている福井県鯖江市。ただ、その地場産業は最盛期から出荷額が激減していた。  「前職の経験から事業再生に興味があった。メガネ産業は非常に厳しい状態だが、高付加価値な分野がある」と目を付けた。同社は現在、市内のメーカー数十社と提携。通販サイトでは世界の有名ブランド以外に、自社ブランドを展開している。  米国滞在時に「次のネット時代はアマゾンで買えなかった商品・サービスが買えるようになる」と直感した。突破不可能に見える障害にこそ大きなビジネスチャンスが潜むもの。清川の考えは、度付きメガネのネット販売に行き着いた。  現在の販売は日本国内、それも首都圏が中心。ただ、当然ながら海外進出を検討している。直近ではシンガポールへ出張した清川は、ビジネスモデルの横展開に熟考を重ねる。  その成長性を評価して、政府系ファンドの産業革新機構などがこの8月に総額約11億円を出資した。日本が抱える社会的課題解決のモデルケースと各方面から期待は大きい。  清川は「日本人としての誇りはモノづくりから来ている。だから、モノづくりを基点としたグローバル・メガベンチャーをつくらなければならない」と固く誓う。50年、60年後に世界をリードする日の丸企業がいなくなってはいけないという信念からだ。 「メガネはそれになりうる。なぜなら世界中でどこでも誰でも使うからだ」。 (敬称略) (文=鈴木岳志) ※内容は当時のもの 日刊工業新聞2014年9月29日

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