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簿外債務40億円超で倒産した物流会社、粉飾決算で資金調達繰り返す

エルエスエム「経営不在」も、大手企業との取引実績で信用つなぐ
 エルエスエムは、1988年10月設立の物流サービス業者。商品の配送やピッキングなどの物流・倉庫業務のほか、物流システム構築などを手がけていた。近年は大手コンビニやコーヒーチェーンと取引を開始して事業を拡大した。

 順風満帆に見えたが、資金繰りは火の車だった。最初のつまずきは2009年頃に着手した経営多角化だ。アパレル事業や汚泥石油処理事業などノウハウもない中で始めた事業で大きな損失を出す。

 この失敗は隠蔽(いんぺい)され、その直後に代表が辞任。社内には後継者はおらず、社歴2年の財務担当執行役員だった現代表が社長に就任。現社長は銀行出身だったが経営経験がないまま、12億円の連帯保証を承継した。

 その後も役員の相次ぐ辞任がありながらも大手企業との取引開拓を推進していく。

 大手企業との取引実績は同社に信用を供与するとともに、特別なノウハウを有する企業との認識を持たせ、取引銀行数は徐々に増加。しかし、その過程で銀行から融資を引き出すために銀行ごとに異なる銀行借り入れ明細を作成して、借入額を過少に見せる粉飾決算を行った。

 さらに多重リースによりリース会社も欺き多額の資金を調達した。

 粉飾決算が表面化したきっかけは昨年3月の関係会社の倒産だ。さらに同時期に通常の商取引では考えにくい債権譲渡登記が設定 されたことで取引先の目は厳しくなった。

 その後も粉飾決算を使って金融機関から資金調達を行っていたが資金繰りは限界に達し、10月27日に自己破産申し立て準備に入ったが、大阪地裁に自己破産を申請したのは年をまたいだ2月6日だった。

 申立時の負債額は金融機関に提出されていた決算書より40億円以上も多い約61億5000万円(保証債務含む)に及んだ。うそで塗り固められた同社が倒産に至ったことは当然と言えるかもしれない。
(文=帝国データバンク情報部)
【会社概要】
エルエスエム(株)
住所:大阪市中央区安土町2―3―13(事業停止時は那覇市字小禄1831―1)
代表:松田 充泰氏
資本金:4000万円
年売上高:約40億100万円(16年9月期)
負債:約61億5000万円

日刊工業新聞2018年3月27日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
この売上高にして簿外債務が40億円超というには異常ですね。ガバナンスもあったもんじゃない。見抜けなかった金融機関もちょっと情けない。

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