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空気圧縮機を進化させた日立グループのお手本

研究開発から製品化までのプロセスがうまく連携
空気圧縮機を進化させた日立グループのお手本

右からシロッコファン、アモルファスモーター、左2つがスクロール機構

 日立製作所と日立産機システム(東京都千代田区)は、高効率化と小型化を両立した空気圧縮機を共同開発した。アモルファス(非結晶)金属を使い独自開発した小型モーターを採用したほか、モーターと圧縮機構を一体化するよう設計を工夫した。研究開発から事業化まで日立グループの総合力を発揮した。

 共同開発した空気圧縮機は従来製品と比べ効率は10%向上、サイズは60%超小さくした。技術的な特徴は大きく二つある。

 一つ目はモーター。これまでモーターの鉄心には電磁鋼板を使うのが一般的だった。これをアモルファス金属に置き換えてモーターを開発し、96・2%の世界最高効率を実現。このアモルファスモーターを空気圧縮機の動力源として搭載した。

 二つ目の特徴は構造だ。アモルファスモーターと圧縮機構を一体化して小型化した。従来はモーターと圧縮機構を別々に設置しベルトで接続する設計だった。アモルファスモーターは軸が短いため、圧縮機の内部に組み込むことができた。

 設計面ではモーターの熱で圧縮機構が変形する現象への対処が課題だった。あらかじめ変形することを見越して圧縮機構を設計して乗り切った。日立産機システムの兼本喜之主任技師は「ミクロン単位で精度を調整した」と説明する。

 プロジェクトを振り返り、日立産機システムの相馬憲一CTO(最高技術責任者)研究開発センタ長は「日立グループ内で、研究開発から製品化までのプロセスが、うまく連携したお手本のような事例」と話す。日立製作所の榎本裕治研究開発グループ主任研究員も「設計者らの疑問に丁寧に答え、理解を得ていった」と明かす。

 空気圧縮機は2017年3月に発売し引き合い好調という。「モーターを必要とする産業機器は多い」と相馬センタ長。空気圧縮機の次のアモルファスモーター適用機器も探っていく。
高効率化と小型化を両立した圧縮機
日刊工業新聞2018年3月22日
後藤信之
後藤信之 Goto Nobuyuki ニュースセンター
 「第47回日本産業技術大賞」の内閣総理大臣賞した製品。モーターの鉄心の材料に鉄合金のアモルファス金属を採用した。アモルファス金属は透磁率に優れ、弱い電力でも磁石になる特性を持つ一方、硬く加工が難しいためモーターに適さないとされてきた。課題解決のためリボン状のアモルファス金属を短冊状に切断して積層するという最低限の加工で鉄心を形成する技術を確立した。

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