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東京女子医大がスマート治療室で手術、医療情報をリアルタイムに確認

来年3月めど開始
東京女子医大がスマート治療室で手術、医療情報をリアルタイムに確認

村垣教授とハイパースコット。

 東京女子医科大学は、磁気共鳴断層撮影装置(MRI)画像や病理検査、脳機能のデータなどの医療情報をリアルタイムに確認できるスマート治療室「HyperSCOT」(ハイパースコット)を使う手術を、2019年3月にも実施する。脳神経外科の患者で1例目の手術を行い、初年30症例を目指す。ハイパースコットはIoT(モノのインターネット)を活用して手術室の医療機器同士をつなぐため、スタッフの経験だけに頼らないより詳細な情報を共有できる。

 通常、外科医は事前の検査結果や、手術中の視覚情報、臓器を触った感触、反応をもとに切除部位や処置を決める。ハイパースコットでは、こうした感覚的な情報をほぼ全てデジタル化し、術中にリアルタイムデータとして医師や医療スタッフに提供する。

 例えば脳腫瘍患者の場合、運動や言語の機能をつかさどる脳領域を傷つけず、できるだけきれいに腫瘍を切除することが求められる。ハイパースコットを活用すれば、3次元化した術中のMRI画像や、切除中の運動神経の状態などがデータとして記録される。

 それらがモニターにリアルタイムに表示され、医師は手術中に脳機能への影響を確認しながら切除範囲を適切に判断できる。

 さらに、記録した術中データをもとに人工知能(AI)を活用し、切除範囲の広さに応じた術後の後遺症のリスクや効果予測を選択肢として提供するなど、医師の判断支援を行える戦略デスクを開発中だ。

 将来的には骨や肝臓などの実質臓器、内視鏡手術、血管内治療術の3種類で、使う医療情報や機器などをまとめて手術のパッケージ化を目指す。さらに20年までに整形外科や外科、産婦人科で臨床研究を実施し、パッケージ導入を進めていく。



日刊工業新聞2018年3月12日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
同大先端生命医科学研究所の村垣善浩教授は、「ハイパースコットは手術室が一つの医療機器のようなもの。必要な機器や情報を厳選し、手術や治療のシステム化を図りたい」と話す。

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