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結晶構造27万件、X線回折49万件…。無機材料のビッグデータ利用可能に

物材機構が有料データベース事業開始
 物質・材料研究機構(物材機構)統合型材料開発・情報基盤部門は5月をめどに、無機材料の有料データベース事業を始める。無機物質の結晶構造データ27万件やX線回折データ49万件などの材料ビッグデータ(大量データ)が利用可能になる。国立研究開発法人にとって、企業との共同研究費や特許収入に次ぐ収入源となるか注目される。

 結晶構造データ27万3830件、X線回折データ49万6145件、材料特性データ29万8021件などを収録した。事業開始時に、それぞれ10%ほどデータを増やす方針だ。

 現在はこの3分の1程度の情報量のデータベースを無料提供している。データを拡充し、データ解析ツールを合わせて提供してサービスの質を高める。

 利用料は1人当たり年間15万円、複数人で使う法人向けに年間200万円を想定する。利用形態によってはデータのダウンロードを一部認める。

 材料開発分野では人工知能(AI)技術やビッグデータを活用するマテリアルズインフォマティクス(MI)が広がっている。物材機構はコンソーシアムを2016年に設立し、技術研修会などでMIを指南してきた。この企業会員数は61社にのぼり、全社が有料データベースサービスを利用すると1億円を超える収入になる。

 国立研究開発法人や大学は、財源の多様化が迫られている。だが主な外部収入は、企業との共同研究費に上積みされる間接経費や特許使用料などに限られ、1億円を超える収入源をつくるのは難しかった。

 これまでデータベースの運営はデータメンテナンスの負担が大きいが、研究成果として評価されなかった。物材機構のデータベース事業が軌道に乗れば他の研究機関にとっても新財源の道を開く。

日刊工業新聞2017年3月6日
小寺貴之
小寺貴之 Kodera Takayuki 編集局科学技術部 記者
 データベースは継続的にデータを更新し続ける必要がありますが、利用は浮き沈みがあります。一度、公的データベースから良い解析結果が出ると、企業はより充実したデータを自社で抑えます。また研究全体に貢献するためには、利用料を高く設定できません。そのためデータベースは国からの予算で運営されてきました。有料サービス化を機に自立への道を踏み出します。  ずっと黒子に徹してきたので、いきなり黒字化するのは難しいのではないかと思います。以前はでは下手に有料化して国からのサポートが切れると、データベースの継続が難しくなるという声もありました。データ利用の浮き沈みは必ずあるので、新しい分析切り口を常に提案していくこと、企業からデータをもらうことなど、いろんな策を出していく必要があると思います。

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