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“韓国のイチゴ"はどうなる?農水省が海外での植物知財保護急ぐ

費用助成で品種登録を支援
 農林水産省は、海外展開に向けた植物品種の知的財産権保護を急ぐ。イチゴの「とちおとめ」やブドウの「シャインマスカット」など、日本で開発された優良品種が海外で無断栽培され、アジア市場で安い値段で流通しているため、これを放置すれば政府が掲げる農産物の輸出拡大にも重大な障害となるため対策を急ぐ。農業試験場や種苗会社、個人業者などが自前で開発した品種を海外で登録する際、必要な費用を助成する。

 折しも韓国で開かれた冬季五輪でカーリング女子選手の「韓国のイチゴはおいしい」との発言が話題になったが、韓国ではイチゴ栽培面積の9割が日本品種を基に開発された品種だという。これら開発品種のイチゴをアジア各国に活発に輸出している。

 予算の総額は2017年度補正予算と18年度予算合計で約3億4000万円。海外で品種登録するための弁理士や海外代理人に対する費用、書類の翻訳や作成費用について助成する。ブドウやイチゴ、リンゴ、長いもやかんきつ類、野菜など、日本からの輸出品と直接競合する可能性が高い品種を優先して支援する方針だ。

 これらの費用と作業は小規模事業者には負担が重く、「種苗事業者の品種開発意欲を阻害していることも考えられる」(知的財産課種苗室)とし、積極支援する。
日刊工業新聞2018年3月5日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
農水省によると、日本の育成者による品種登録件数は年500種程度。このうち果樹など輸出戦略で重要な農産物は130種に及ぶ。外国で品種登録ができるのは自国で譲渡が始まってから4年以内(果樹は6年)に限られ、品種登録も国ごとに行う必要がある。海外品種登録に関する相談窓口は設置済みで、主要な出願先国への海外出願マニュアルとあわせて対策を急ぐ。 (日刊工業新聞第一産業部・嶋田歩)

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