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大手企業退職後の進路はカイゼンスクール!全国8カ所で新設へ

生産技術やノウハウの汎用化をスクールで学ぶ
 中小企業などの生産性向上を指導する専門人材を育成する「カイゼンスクール」が8月から全国で相次ぎ開校する。経済産業省の補助事業を活用して茨城県や静岡県、広島県など計8カ所で学校が新設される。各地域に住む大手企業退職者らの生産技術・ノウハウを研修で汎用化して、低生産性に悩む地元企業に派遣して経営改革を後押しするのが狙い。国が重要政策として掲げる地方創生を後押しするため、地方の中小企業・小規模事業者を指南する役割を果たす人材育成に取り組む。

 経産省は8カ所のカイゼンスクール開設のほかに、既存の山形大学と新潟県長岡市、群馬県の3カ所に対しても学校運営費や中小企業への指導員派遣費などを補助する。各校で年10―15人の大企業退職者らを受け入れる予定。2015年度内に100人以上の指導員育成を目指す。

 受講生として大手企業の工場長や生産管理部長経験者などを想定している。生産技術の知識は豊富だが、出身企業内でしか通用しない部分もあるため、学校でその知識を標準化し、派遣先企業で役立つようにする。

 スクールの受講期間は約3カ月。生産改善方法論などの座学とともに、地元企業を訪れての実地演習も行う。卒業した指導員は各校に属して、中小企業などの要請に応じて派遣される。現場ではリードタイム短縮や在庫削減、原価管理などを教えて、派遣先の業績改善を支援する。経産省によると、既存スクールでの指導員派遣の実績として、2割増収や黒字転換、リードタイム半減など具体的な成果が上がっているという。

 北海道室蘭地区、福井県、和歌山県、宮崎県延岡市でも16年度からのカイゼンスクール開校を検討している。政府は成長戦略で、20年までに黒字中小企業・小規模事業者を現状比2倍の140万社に増やす目標を設定する。指導員派遣による生産性向上活動を全国へ展開することで、地域経済を活発化して日本全体を成長軌道に乗せていく。
日刊工業新聞2015年07月03日 1面
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
よい取り組みだと思いますが、国がここまで大規模にやってしまうと、既存の民間コンサルからは「民業圧迫だ!」との声も聞こえてきそう。

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