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シワ改善市場、伸びる!「薬用」でポーラと資生堂が先行

「美白」に次ぐ成長
シワ改善市場、伸びる!「薬用」でポーラと資生堂が先行

資生堂は多ブランドから商品展開できる強みを持つ

 化粧品業界で、シワ改善という領域が成長市場になりつつある。ポーラ・オルビスホールディングス傘下のポーラが厚生労働省からシワを改善する薬用化粧品として日本で初めて認可を受け、2017年1月にシワ改善美容液を発売。同6月には資生堂も同認可を受けたシワ改善クリームを投入した。17年度は、ポーラが国内で約94万個・約130億円を、資生堂は国内外で累計170万個をそれぞれ売り上げた。現在2社で数百億円の市場だが、他社も追随の動きを見せる。

 ポーラの「リンクルショット メディカル セラム」は、新たな医薬部外品有効成分・ニールワンを配合。ニールワンが、真皮成分を分解する酵素の「好中球エラスターゼ」の働きを抑えてシワを改善するという仕組み。

 02年の開発当初は5400種類の成分をスクリーニングするところから始まった。09年に厚労省への申請を開始し、17年の発売に至るまでに15年かかった。

 山口裕絵執行役員は「大量のデータ提出など膨大なやりとりを重ねた。シワ改善のジャンルがないため、シワとは何かの定義から始まった」と振り返る。

 資生堂の「エリクシール シュペリエル エンリッチド リンクルクリームS」は、有効成分に純粋レチノールを配合。ヒアルロン酸を生み出して水分量を増やすことでシワを改善する。資生堂ではビタミンAのレチノール研究を1989年に始めた。

 当初からシワ改善を目指して研究を進めており、約30年後にシワ改善効果効能としての研究成果が出た。アドバンストリサーチセンター皮膚形態研究グループの大田正弘氏は、「社内からは新成分で開発した方が良いのではないかとの声もあったが、レチノールに勝る成分はないと新規性よりも効果を重視した」と明かす。

 純粋レチノールは93年に医薬部外品有効成分として認可されているため市場での安全性を認められ、他成分との配合など多ブランドから商品展開できる強みを持つ。

 資生堂の魚谷雅彦社長は「17年にブームとなったが、一過性にならないよう18年もブランド幅を広げながら市場を作っていく」と話す。

 ポーラは厚労省との取り決めで17年の発売から2年間は、他の剤型にしたり他成分を入れたりすることはできず、国内販売に限定。18年度は100億円の売り上げを目指す。

 年初に値下げするなど新規顧客を取りこむ。山口執行役員は「ヒットに終わらせず、ロングセラー商品にしていきたい」と話す。

 化粧品業界ではこのほかに、コーセーが「有効成分を厚労省に申請中で認可を待っている状況」(広報室)にある。P&Gジャパンのスタニスラブ・ベセラ社長は「現在開発中で製品の販売時期は未定」とコメントした。
ポーラは新規顧客の取りこみで18年度に100億円の売り上げを目指す

(文=高島里沙)
日刊工業新聞2018年3月2日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
化粧品口コミサイト「@コスメ(アットコスメ)」を運営するアイスタイルの調査によると、17年度は同サイトに投稿された「しわ」という単語の出現率が増加。シワ改善クリームが、潜在的なニーズを掘り起こしたと分析する。今後も市場参入が相次げば、美白化粧品の約2000億円市場に次ぐ一大市場に成長する可能性を秘めている。 (日刊工業新聞第二産業部・高島里沙)

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