インスタブームが追い風。CPに見た、デジカメ復活の好機

ミラーレス軸に“新しいカメラ”模索

CP+で人気を集めたリコーの全天球カメラ「シータ」の体験コーナー

 デジタルカメラ産業が正念場を迎えている。ネットへの写真投稿の増加が「インスタ映え」(会員制交流サイトのインスタグラムで映える写真)との流行語まで生むブームとなり、2017年の出荷台数は10年以来の前年比プラス。だが、本格回復にはほど遠い。1日にパシフィコ横浜(横浜市西区)などで開幕した国内最大のカメラ展示会「CP+(シーピープラス)2018」では、メーカー各社が人気のミラーレス一眼カメラを相次ぎお披露目し、シェア拡大を狙う。ブームを本物の回復につなげられるか。  市場回復のカギを握るのはミラーレスカメラ。ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ(東京都港区)の長田康行シニアゼネラルマネジャーは、「既存の『ベーシック』の概念を打ち破る商品だ」と、新型ミラーレスカメラ「α7III」を自信満々で披露した。α9やα7RIIIの良い点を取り入れて、暗所撮影時の画質などを向上した。  同社は一眼レフと同じサイズのフルサイズイメージセンサーを搭載した高価格帯製品により、ミラーレス市場をリードする。上位機種のα9と高解像度のα7Rシリーズ、高感度のα7Sシリーズに対し、α7はバランスの取れたスタンダードの位置付けで、より幅広い層への販売を狙う。  キヤノンは、家族向けから本格写真まで対応できるエントリーモデルとして人気の「EOS Kiss(キス)」から初のミラーレスカメラを投入。カメラ事業を担当する戸倉剛執行役員は、「『EOSキスM』は、買い求めやすい価格ながら、言い訳のいらない性能の高さにした。ミラーレスでも首位を目指す上で、起爆剤になる」と意気込みを語った。全ての機能で平均以上の良いバランスを目指した。  新映像エンジンと約2410万画素のAPS―Cイメージセンサーでどこまで画質を高められるか。スマートフォンとの接続性や、電子ビューファインダー付きで小型・軽量、これを7万円台の価格で実現することにこだわった。海外では「M50」の名前で展開する。「エントリー層より上位の層も取り込みたい。それができるフルスペックだ」(戸倉執行役員)という。  富士フイルムは、Xシリーズとして最高性能の「X―H1」を投入する。同社は、2―3年内に10万円以上の高級ミラーレスでシェア5割を目標に置く。新製品はハイパフォーマンスの“H”から名前を取り、「撮影領域を広げる画期的な商品」(助野健児社長)として訴求する。高剛性ボディー内に5軸・最大5・5段の手ブレ補正機能を搭載し、スポーツなど動きの激しい被写体や、雪や砂漠などの厳しい環境の撮影にも対応する。  オリンパスは「オリンパス PEN(ペン) E―PL9」を9日に発売する。パナソニックは、18年に入って発売した高級ミラーレス機などをCP+に展示した。  出遅れているニコンは、CP+でお披露目はなかったが、18年度中にフルサイズのイメージセンサーを搭載した新型ミラーレスカメラを市場投入する考え。2月に開いた決算会見の場で、岡昌志副社長が「来年度中には出せると思っている」とした。得意な一眼レフと同じサイズのセンサーを搭載し、ミラーレスでも画質とニコンらしさにこだわる。  キヤノンの戸倉執行役員も、「フルサイズセンサーの高級機も視野に入れている」と語り、全方位の商品戦略を進める。一眼レフ市場を二分するキヤノンとニコンがフルサイズ搭載のミラーレスを投入すれば、さらに高級ミラーレスの選択肢が広がりそうだ。  高画質で高速連写、そして小型化へと進化を続けるミラーレス一眼カメラだが、一眼レフからシェアを奪うだけでは市場全体の活性化は難しい。17年の出荷がプラスに転じた背景には、16年に熊本地震で出荷が落ち込んだ反動による増加もある。  そこで、カメラ各社は新しいタイプのカメラを探る動きを活発化している。CP+で人気を集めたのが、リコーの全天球カメラ「シータ」。多くの人が興味深そうに試し撮りしていた。CP+への出展はなかったが、カシオ計算機もエクストリームスポーツなどの撮影向けに、タフカメラの新ブランド「G’z EYE(ジーズアイ)」を17年秋に立ち上げた。  王道を歩むキヤノンも商品化プロセスを変え始めた。コンセプト段階で市場からのフィードバックを反映し、環境変化に素早く対応するベンチャー企業のような手法を試みている。その一端を見せたのは1月に米ラスベガスで開かれた「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー」(CES)。  超望遠と中望遠の2焦点を簡単に切り替えられる手のひらサイズの単眼カメラなどを参考展示した。見た目はミニ望遠鏡のようで、スポーツ観戦時に望遠鏡としても使える。コラボレーションを求める引き合いが多く、戸倉執行役員は「既存とニュータイプで、カメラのスコープを広げることが活性化につながる」と話す。 ●カメラ映像機器工業会会長 牛田一雄氏「映像文化、伸びる余地ある」  16年の熊本地震の影響を加味しても、市場は下げ止まり傾向が出てきた。スマートフォンで写真を始めた人たちが、ファインダーをのぞいてしっかり撮影したい人は一眼レフカメラへ、気軽に使いたい人はミラーレスへ向かうように、プロモート(促進)したい。  今やスマホは誰もが持つインフラだ。そのインフラに、スマホでは撮れない暗所や望遠の写真を撮れるカメラが乗っかり、写真を共有してもらう。この点で考えれば、映像文化は伸びる余地がある。逆転できる。18年の結果が17年を上回れば本物になる。この1年に注目してほしい。  また、スマホ世代は「カメラはこういうもの」という先入観がない。撮りたいものも人それぞれで、360度カメラやインスタントカメラなど、多様なイメージキャプチャーデバイスが受け入れられる。バリエーションを広げることもカメラの正常進化だ。 (文=梶原洵子)

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