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発電施設、洞道新設…。地下で進む東京再開発

発電施設、洞道新設…。地下で進む東京再開発

丸の内熱供給(東京都千代田区)の丸の内一丁目センター

 2020年の東京五輪・パラリンピック開催を控えて東京都心の再開発ラッシュが続く中、東京の地下も変わろうとしている。大規模な発電施設の導入や洞道(とうどう)の新設など、エネルギー利用を効率化し、災害に強い街づくりを目指す大型工事が相次ぐ。東京の地下は鉄道をはじめ電線やガス・下水の配管など多くのインフラが埋まっている。工事の難易度は高いが、地上の再開発に歩調を合わせればハードルを乗り越えやすい。

 丸の内熱供給(東京都千代田区、辻正太郎社長)は有楽町地区でエネルギー供給の配管を通す約250メートルの洞道を新設中。

 深さは地下20―30メートルで地下鉄をくぐるように通す。旧東京商工会議所ビルなど3棟を一体で建て替える再開発ビル「(仮称)丸の内3―2計画」の地下に高性能冷凍機とボイラを設置し、新しい洞道を利用して熱源を地区内のビルに供給する。有楽町地区と隣接する丸の内2丁目地区と熱をやりとりするため、両地区をまたぐ地下通路の建設も進行中だ。

 エリアを配管で結んでエネルギーの供給網を広げることは設備同士の支援体制を強め、事業継続計画(BCP)対策になる。「新しいプラントを優先的に使うことでエネルギー効率を高められる」(野村修一人事総務部副部長)効果もある。

 三井不動産は日本橋で着工した再開発ビル「日本橋室町三丁目地区第一種市街地再開発事業A地区」の地下に大型のガスコージェネレーション(熱電併給)システムを3台導入し、地域の複数のビルに熱と電気を供給する計画を進めている。

 通常時は系統電力との併用により最大約4万3000キロワットを供給。系統電力が停止した場合でも約50%の供給が可能。災害時に強さを発揮するだけでなく、最新設備によって発電時の廃熱も余すことなく使い切り、二酸化炭素(CO2)排出量の削減にも寄与するシステムとなっている。

 現在は公道の一部に立て坑や洞道を構築し、電気と熱の配管工事を進めている。予期せぬ障害も出てくるため「他企業のインフラ情報の収集や試掘などを実施しながらルートの構築を行っている」(三井不動産)。

 森ビルは虎ノ門地区で熱と電気の供給を20年に始める。同地区で開発中の超高層ビル2棟や地下通路、周辺の商業施設などにエネルギーを供給する計画で、ビル2棟それぞれにプラントを設置し、エネルギーの相互融通を可能にする。
(文=齋藤正人)
日刊工業新聞2018年2月23日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
エネルギー供給のために設立した地域冷暖房会社とビルに入居するテナントとの3者連携も図る。「エネルギーを一方的に送るのではなくエリアとして情報を共有し、省エネを図る」(中島慶治虎ノ門エネルギーネットワーク社長)考えだ。 (日刊工業新聞第二産業部・齋藤正人)

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