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高専にタイの理工系エリート中卒生受け入れ

本科・専攻で7年間
 国立高等専門学校機構は、4月からタイの理工系トップクラスの中学校卒業生の受け入れを始める。留学生が日本人学生と同じ年数で修了することを目指す初のケースとなり、日系企業を含む同国の高度技術者ニーズに迅速に対応できるようにする。各年12人、高専本科・専攻科の計7年間の奨学金を日本ではなくタイ政府が用意する。さらにタイで高専が設立された時には、帰国した卒業生が教員となって両国をつなぐ役割を期待している。

 中学卒業後の若者を高度技術者に育成する高専の仕組みは日本独自のもの。新興国では大学と、機械修理技能など身に付ける職業訓練学校の間に位置する高専のような実務教育機関がなく、注目が高まっている。高専型機関の新設はモンゴルで2014年に実現。2国目としてタイでの計画が進行中だ。

 タイにはトップクラスの生徒に理工系教育を行う中高一貫の「チュラポーン王女サイエンスハイスクール」が12校ある。ここで中学校を終えた各校最優秀層が来日し、高専に入学する。これまでは、現地高校卒業後に高専に編入学する仕組みだったため、修了に2年間の遅れが出ていた。

 18年度には茨城工業高等専門学校と日本学生支援機構が、日本語教育を含めて設計した二つのカリキュラムで中学卒業後の留学生の受け入れを始める。19年度から両カリキュラムを融合し、各地の高専で受け入れる計画だ。

 留学生は専攻科まで終え、大学卒と同じ学士を取得する。これにより企業での活躍のほか、大学教員などの道が開ける。

 タイでは中学卒業後に技術教育を受ける「テクニカルカレッジ」で、すでに高専型コースが設置されている。今回の取り組みで高専型機関の開設に弾みが付きそうだ。

   

日刊工業新聞2018年2月15日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
日本の高専教育の仕組みは世界的に評価され、他国にないもので注目が高いことは知っていたが、各国は予想以上の踏み込み方だ。自国にない学制を新たにつくったり、日本政府の資金でなく自国の資金を投入したりといった点が、その本気度を裏付けている。自国資金での学生派遣は、「ルックイースト」政策の歴史があるマレーシア、文科大臣が高専出身だったモンゴル。そして今回のタイという位置付けだ。

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