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白泉社と博報堂、AI自動着色マンガを配信

PFNの技術活用
白泉社と博報堂、AI自動着色マンガを配信

着色前(左)と着色後

 白泉社(東京都千代田区)と博報堂DYデジタル(東京都港区)は、プリファード・ネットワークス(PFN、東京都千代田区)の人工知能(AI)による自動着色技術を使ったカラー版マンガ作品の配信と販売を始めた。第1弾は白泉社が扱う「結婚×レンアイ。」(萩尾彬著)など2作品。今後も多くの作品のAI着色によるカラー版を提供する。

 PFNが開発した「ペインツチェイナー」の仕様を変更し、マンガ着色向け新モデルを作り上げた。独自のグラデーションなどの味わいが楽しめるという。ペインツチェイナーは白黒などで描かれた線画のファイルや写真画像を読み込ませると、AI技術のディープラーニング(深層学習)により自動的に着色する技術。

 PFNがマンガ着色モデルの開発を担当。博報堂DYデジタルは仕様策定と制作進行のディレクションを担当した。

日刊工業新聞2018年2月14日



技術に大きな反響


 ファナックやトヨタ自動車との協業で知られるプリファード・ネットワークス(PFN、東京都千代田区)は、AI技術のディープラーニング(深層学習)を得意とする。深層学習は分かるようで分からない技術。だが同社エンジニアの米辻泰山氏が開発した「ペインツチェイナー」は、線で書いたイラストに自動着色してくれる。深層学習を使った「目に見える」分かりやすい技術だ。

 「魔法みたい」。ペインツチェイナーをインターネットで1月に発表した際、世界的な大反響があった。ただの線画に着色するのは難しい。

 白黒の写真に着色する技術は赤、緑、青(RGB)を判別できるが線画はもともと色がないためだ。線画のどの部分がどんな色なのか、正解近くに確率を上げるには、白や黒といったハッキリした色に着色するより灰色のようなあいまいな色にした方が良い。

 だが、着色はハッキリした色の方が良く、技術的な工夫が要った。深層学習を使い着色したデータを、いいかげんさを見分けるツールでチェックする。これにより課題を解決したという。

 着色の対象は主に女の子のアニメ調の線画だ。使い方は簡単で、線画ファイルをアップロードして、自動着色ボタンを押すだけ。

 待っていれば着色したイラストができあがる。顔の位置や身体の肌色の位置を高精度に認識する。色指定などもでき、塗りたい色に簡単にアレンジできる。

 ペインツチェイナーは無料の専用ウェブサイトかピクシブ(同渋谷区)のイラストコミュニケーションアプリ「ピクシブスケッチ」から利用できる。応用プログラムインターフェース(API)を公開しており、誰でも使いやすく改造できるという。

 米辻氏はロボットのハード系には強かったがAIに詳しくなかった。ちょうど仕事が一段落した昨秋に、PFNの深層学習フレームワーク「チェイナー」を学ぶことにした。

 周りは深層学習の専門家ばかり。めきめきと技術を高め、何か楽しい成果を出したいと趣味の一環でペインツチェイナーを作った。知能的なシステムながら、コードは数百行とシンプル。深層学習の応用の可能性の高さを示しており「良質なデータさえあれば、チェイナーの深層学習で気軽に便利なシステムを作ることができる時代になった」(米辻氏)と説明する。

 ペインツチェイナーはPFNとしては異色の存在。だが、米辻氏は「ビジネスとして継続させたい」と意気込む。数多くイラストを描く必要があれば、ペインツチェイナーはツールとして役立つ。ユーザーコミュニティーを育てていけば、画材の一つとして定着して事業として成り立つ可能性が高まる。
(文=石橋弘彰)

2017年12月07日



 
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
まさに職人、アナログの世界だったマンガ制作にもこれから深層学習がどんどん入っていきそう。それにしてもPFNはモテモテですね。

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