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JDIの新しいマーケティング組織は機能するの?

“自ら動く”という文化を根付かせる
 ジャパンディスプレイ(JDI)は、2017年10月、社内横断組織「マーケティング&イノベーション戦略統括部」を設置した。マーケティング機能を強化し、市場のニーズを探って製品開発につなげるのが狙いだ。ディスプレーの供給だけでない、新たなビジネスモデルも模索する。現在、同社は経営再建途上にあるが、その先の自立と成長を見据え動き始めた。

 17・6%―。16年度のJDIの売上高で、非スマートフォン事業が占める比率だ。そのうちの6割程度は自動車向けパネル事業で、非スマホ・車載のビジネスはまだまだ小さい。今回のマーケティング部門の刷新は、新規事業の立ち上げ加速という重要な役割も担う。

 「(JDIのビジネスで)創造の部分を受け持つ」―。こう宣言するのは、最高マーケティング責任者(CMO)兼最高販売責任者(CSO)に就任した伊藤嘉明執行役員だ。

 コカ・コーラやソニー、アクアなどを渡り歩いてきた異色の経歴を持つ伊藤執行役員は、「BツーB(企業間)やBツーC(対消費者)にかかわらず、マーケティングは全てのビジネスのドライバーであるべきだ」と主張する。

 それまでJDIのマーケティング機能は事業部の傘下にあり、サポート部隊との位置付けが強かった。特定顧客からの要求を受けて製品の改良につなげるのがメーンで、マーケティングが必要ない場合も多かった。

 顧客の仕事を待つだけでは、ビジネスは広がらない。そこでスマホ、自動車、仮想現実(VR)などを含むそれ以外の3カンパニー制の導入に合わせ、各カンパニー傘下の部隊だけでなく、カンパニー横断的に横串を刺すマーケティング専属部門を設置した。

 販社ごとにまちまちだったマーケティング機能の有無も、専用チームをつくって体制を整えた。「カンパニーや各地域、技術をつなげて新しいソリューションやビジネスをつくりたい」(伊藤執行役員)。

 伊藤執行役員は「マーケティングとは、いかに付加価値を付けて売れるか、ということ」と説明する。例えば“ディスプレーメーカー”であることに過度にこだわらず、“インターフェース”という視点に立てば、部屋の壁一面をタッチパネル化するなど異業種のビジネスも提案できる。マーケティング部門では、幅広い視点を持ちながらニーズを集め、ビジネスにつなげる方針だ。「JDIには技術も、それを理解する人も、工場もある。これからの可能性はとても大きい」(同)。

 外部連携も積極的に進める構えだ。すでにある古い技術でも、他の業界は興味を持つ場合がある。こういった短期で事業化しやすいケースから、中期、長期と、それぞれの時間軸に合わせた連携を模索する。
               

(文=政年佐貴恵)
日刊工業新聞2018年2月2日
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
「5億―10億円のビジネスでも、集まれば大きくなる。勝ちパターンを積み重ねて社内に化学反応を起こし、“自ら動く”という文化を根付かせたい」(伊藤執行役員)。JDIのマーケティングに、新風を吹かせる。

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