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職人技の「きさげ」自動化、しかも摩擦を最大10分の1に

兼房が特殊な切削加工法の受託を開始
職人技の「きさげ」自動化、しかも摩擦を最大10分の1に

特殊工具で鏡面に微細なディンプルをつけるタイリング加工

 兼房は直径0・1ミリ―1ミリメートル、深さ2マイクロ―10マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の多数のくぼみ(ディンプル)を金属表面に加工し、摩擦を最大10分の1にする特殊な切削加工法「タイリング」の受託加工を始めた。専用工具などを販売する傍ら、顧客がノウハウ蓄積などの負担なく量産品に採用しやすい環境も提供し、同加工法の普及を図る。

 兼房は汎用マシニンググセンター(MC)と専用工具で同加工をする体制を、愛知県大口町の本社工場に整えた。2018年夏以降に旋盤も導入し対象を広げる。秘密保持を望む顧客には本社工場の専用スペースを貸し出す。

 タイリングは弧状の突起刃が側面にある特殊エンドミルを回転させ、加工対象物(ワーク)を送りながら表面の一部を断続的にかき取る。

 ディンプルは、工具1回転で1刃当たり1個、毎秒50―150個加工できる。工具に複数の刃をつけ1回転で多数の成形も可能で、形は円、楕円(だえん)、三角など任意にできる。

 タイリングはいわば職人技の「きさげ」の自動化。ディンプルが切り粉を補修し潤滑油をためることで摩擦を減らす。汎用MC・旋盤が使えるため段取り替えなしでワークの鏡面加工後に連続ででき、エッチングやレーザー加工、ショットブラストなど他の摩擦低減手法より作業効率が高い。
日刊工業新聞2018年1月12日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
タイリングは兼房が名城大学理工学部の宇佐美初彦教授と共同で開発した。17年4月に専用部署「タイリング室」を置き、専用工具や一部改良した加工機の売り込みやテスト加工を本格化した。自動車の駆動系部品や機械の摺動(しゅうどう)部、軸受など幅広い用途を期待、受託加工で普及と早期の収益化を目指すという。

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