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インテルが49量子ビットの超電導プロセッサー、CESで発表

データをもとに自ら学習する、AI向けニューロモーフィック・チップも開発
インテルが49量子ビットの超電導プロセッサー、CESで発表

左からインテルが開発した7、17、49量子ビットのプロセッサー(Credit: Walden Kirsch/Intel Corporation)

 米インテルは8日、量子コンピューター向けに49量子ビット(キュービット)の超電導プロセッサーのテストチップを開発し、出荷を開始したと発表した。同社は2017年10月に17量子ビットの超電導テストチップの出荷開始を発表している。

 米グーグルの研究者によれば、49量子ビットの量子コンピューターが既存のスーパーコンピューターを性能面で上回る境界線と言われ、米IBMでは昨年11月に50量子ビット素子による量子コンピューター試作機の製作と稼働に成功。そうしたことから、「タングルレイク」と名付けた今回の49量子ビット素子は、インテルの量子コンピューターシステム開発にとっても大きな節目となる。

 インテルは超電導を使った量子ビット素子のほかにも、シリコン素材によるスピン量子ビット素子の開発に取り組む。スピン量子ビットとは、電子が持つ磁石のような性質であるスピンを量子コンピューターの計算の基本単位である量子ビットに利用するもの。インテルでは、スピン量子ビットのほうが超電導タイプよりも小さく量子ビットを増やせるほか、既存の半導体製造ラインを流用できるとしている。

 同社のブライアン・クルザニッチCEOは、米ラスベガスで開幕した世界最大の家電・IT見本市「CES2018」の基調講演で「創薬や金融モデル、気候予測など、現在の高性能なスーパーコンピューターを使って計算に数カ月から何年もかかるような問題でも、量子コンピューターなら解けるようになる」と話し、量子コンピューターの将来に期待を示した。

 このほか、同CEOは脳の仕組みを模した電子回路を持つニューロモーフィック・コンピューティング用のテストチップ「ロイヒ」についても紹介。実世界のデータを取り込みながら自ら学習・進化する人工知能(AI)チップで、たとえばセキュリティーカメラや自動運転車などとリアルタイムに通信するスマートシティーのインフラとして役立てられるという。今年前半には有力大学や研究機関にロイヒの提供を開始し、より複雑なデータや問題への適用研究を進めるとしている。
2018年1月10日付日刊工業新聞電子版
藤元正
藤元正 Fujimoto Tadashi
IBMもグーグルもマイクロソフトも量子コンピューターの研究を進めているが、超電導素子を使おうとすると極低温まで冷やさなくてはならないのが難点。インテルの「タングルレイク」も、アラスカにある極寒の湖から命名したのだという。

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